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楽器の易しさ [雑感]

本ブログ開始当初「楽器の難しさ」という記事を書きました。

ピアノ鍵盤+ギター指板改.png
以前作成したピアノとギターの音域の対応図。
ここでは楽器の易しさ面を考えてみたいと思います。そうそう易しい楽器というものも数ないと思いますが,音を出すだけなら,ピアノです。猫でも弾けます。ギターのみ弾く人は「鍵盤は難しそう」と言います。鍵盤を弾く人がギターを弾くと難しいと言います。ギターの調弦では,ぽんと弾くだけでEmの和音になっています。鍵盤をテキトウに弾いても何の和音にもなりません。

ギターは和音楽器,コードの押さえ方を知っていれば,伴奏「ぐらい」すぐに弾ける楽器。⇒ 易しい。というイメージになるのかもしれません。鍵盤でメロディや初級曲弾けても歌の伴奏はまずできません。ギターでは,メロディや初級曲弾けなくても歌の伴奏はできます。アコギなどで伴奏のみやる方は,メロディを弾けない方がいて驚きます。メロディ弾くよりむしろ伴奏の方が易しいということです。技術が易しいか難しいかは別として,お手軽であることは確かです。ヴァイオリンや木管楽器などよりもかなり大きいですが,持ち運びサイズです。伴奏が出来る楽器で持ち運びサイズのものは,生楽器ではギターのみと言っても良いでしょう。



シューベルトの時代,ギターと同調弦で弓奏するアルペジオ―ネという楽器がありました。当時新たにできた楽器だったので,そういうネーミングだったわけですが,むしろギターが伴奏に強いという面では,ギターこそネーミング的にはアルペジオーネといっても良いものでしょう。コードを押さえてアルペジオはもちろん,シャンシャンと弾けば,いわば音程・和声のある打楽器にもなります。

いわば多様性のある楽器ですので,現在でもいろんな音楽のジャンルで使われるのでしょう。むろんクラシックギターとなると,現在では少数派なわけですが,半世紀以上も前にも小船幸次郎氏が書いていた,「バッハも弾ける立派な楽器」なのですが,コードを押さえてシャンシャンと弾く楽器だと思っている人からしたら,「バッハをどうやってギターで(シャンシャンとコードストロークで)弾くのですか?」と真顔で聞かれることがあります。ギターが易しいというイメージは多分に誤解に基づいています。



鍵盤はテキトウに弾いても和音にならないと書きましたが,メロディを弾くのは容易です。音が楽譜通り順番に並んでいますから,グリッサンドのような弾き方も容易です。和音を弾くのはコードの押さえ方を覚えないといけません。鍵盤の数は沢山ありますが,12音の繰り返しなので,コードフォームを覚えるのはギターよりも却って容易かも知れません。それも難しいとすれば,全く鍵盤を弾けない人が,何か即興で弾いている様にそれなりに聴かせる方法があります。昔,タモリがやっていた方法ですが,白鍵のみ弾くという方法です。

「何だそれではハ長調のみでつまらない」と思われるかもしれませんが,そうではありません。ハ長調とはC音を基音(ド)として並べた音階(イオニア旋法)で,それにドミソ,シレソ,ドファラの3和音を基本とした和声の動きに特化した古典期に確立された音づかいです。白鍵のみ出鱈目に弾いても必ずしもハ長調にはなりません。全モードを渡り歩く様な,聴きようによってはお洒落な曲となります。極論してしまえば,黒鍵は,各種旋法のうちイオニア旋法とエオリア旋法をいろんなキーで実現したい(むろん他の旋法もそうでですが)為に出てきた音とも言えるので,キーによって旋法も同時に変わるならば,要らないわけです*。

もう一つは,逆に黒鍵のみを弾くという方法です。これは白鍵のみ弾くよりもさらに単純で,ご存じな方も多いと思います。これはペンタトニックスケール(五音音階)になっていますから,どのように出鱈目弾いても,それなりの素朴な雰囲気の曲になります。このスケールは音楽の原形質のようなもので,長調も短調もなく,終止形もありませんので,曲はどこで終わらせるか延々と続くことになります。



単純なコツさえ知っていれば,シロウトでも鍵盤の方がむしろ音遊びするには簡単かもしれませんし,きちんと勉強するにも,ほとんどの楽典や和声の本は鍵盤で書かれていますので鍵盤のほうが遥かに有利です。凡ゆる音がユニバーサルにワンタッチで弾ける楽器ですから,その分沢山の音をコントロールする必要はあります。

まあ,もっと言ってしまえば,シェーンベルクの12音技法ならば,鍵盤に限らず半音階の音程が作れる楽器ならどのように弾いても構わず,すべての調も旋法も崩壊しているわけですが,シロウトには出鱈目と区別するのは難しくなります。逆にギターでは如何に出鱈目を弾こうとしてもそれなりの響きになってしまいます。楽器の特性ですから,どちらが易しいとも難しいとも言えないでしょう。

*かつてこんなお遊びをやりました。
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Cecilia

コロナ禍で楽器演奏を始める方が多いという報道がありました。
ウクレレとかお手軽で人気らしいですね。どんな楽器でも極めようと思ったら難しいですね。
以前一五一会という楽器の体験をしたことがあります。ギターみたいにコードの押さえ方を覚えなくて良いのは便利だなあと思いました。
あとオートハープも簡単に伴奏を付けられて便利だなあと思いました。

by Cecilia (2021-03-05 17:47) 

Enrique

Ceciliaさん,出歩かず家で楽器を弾くと言うのは良い傾向ですね。
ウクレレは小さくて弦も少ないですからギターよりもお手軽ですが,私は持っていません。ルネサンスギターが原型らしいので古楽の人でもウクレレで流用する人もいるようです。通常のウクレレでは低音弦の方が却って高くなっているのがどうも苦手です。
一五一会にオートハープ,世の中には色んな楽器があるものですね。
by Enrique (2021-03-06 06:35) 

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