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タッチと音色に関する省察 [演奏技術]

「現代奏法」とももう言われない,現在標準のタッチにしてから,ツメを短くしていました。

指頭で弦を押し込みますから,その修得時にはツメが長くない方が都合が良かったようです。しかし,だんだん発音時の雑音に悩まされるようになりました。

発音の問題は,自分の声が良く分からないのと同様に,案外自分では分かりにくいものです。演奏時に違和感や雑音に気がつけば別ですが,小さなチッピングですと,録音して聴いてみても,気がつかないこともありますので,更に録音波形を見るとかして,まずその問題に気づく必要があるでしょう。

「ギターは音色が命」などという積りは毛頭ありません。
音楽の3要素は,「リズム,旋律,ハーモニー」です。そこに音色はありません。しかし,楽器毎(肉声を含む)の音色があってこそ,音楽は成り立つと考えれば,音色は音楽の3要素を後ろから支えているとでもいえるでしょうか。

仮に,リズム,旋律,ハーモニー共に満点の演奏があって,音色は零点という事はまず考えられません。3要素を成立させるためには,それなりの音色は必要なはずです。だから音色のみ独立した要素とはしにくいのだと思います。非常に美しい音色の音を,ランダムなリズムと音程で聴かされたらどうでしょう?現代音楽ならありそうですが,伝統的な音楽の3要素は全く満たされません。音色は音楽を構成するのに必要な要素ですが,「ウサギの無い笑い」のようなもので,音色のみの音楽は無い(筈な)のです。

先日記事にしたジョン・ケージの音楽は,リズムと音色の音楽だそうですから,音楽の3要素のうちではリズムのみ満たしていることになります。ただ,音色という音楽の全要素に連関する要素がそのキーになっているとも言えるのでしょう。

話がずれそうなので,タッチに戻りますと,爪を短くして,大きな関節を使って弦を押す感覚を身につけました。それまではアルアイレは指先で軽く弦をはじく感覚だったのが,この方法によってアポヤンドを使わなくても弦をしっかり捕えられる様になりました(まだ十分いっているかどうかですが)。敢えてアポヤンドを使うのは柔らかい音色を得るとか,消音の為とか割と特別の用途のみになったようです。

しかしながら,特にa指で雑音が出る様になりました。耳につく嫌な音です。爪の削り方を工夫してもなかなか治りません。加齢で爪が悪くなったのも要因ですが,爪が短くしたことが要因のようです。短いとどうしても爪の悪いところを触ってリリースするので嫌なチッピング音がしていた様です。タッチの問題は3次元的ですから,結構難しいです。しかもその時間変化ですから。以前,弦にマーカーを塗って弾いてみてリリース点を探ったりしていました。

当方の場合,(健康に留意するにしても)爪を良くすることは出来ないので,少々長くする事で改善しました。爪が悪いのに長くしたほうが良くなったというのも逆説的ですが,短い時は爪の悪いところしか使えなかったのが,長くすることで良いところが使える様になったようです。むろん爪の面取りは必須ですが。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

私の爪は、最近少し薄くなり縦筋が目立つようになりましたが、爪の材質的な健康状態はまだ何とか保っています。ただ、私はiとaの爪が昔から少し歪んでいますので、削り方を工夫しないと爪が弦に引っかかってしまいます。最近、奏法、タッチを改善?したので、爪の削り方も少し修正しました。(^^;
蛇足ですが、私のiの指は子供の頃車のドアに軽く挟まれたのが原因だと思います。(^^;
良い音を出すには、爪の健康状態や、形状が大変重要ですね。さらに、私は指頭の柔らかさも重要ではないかと思っています。

by たこやきおやじ (2020-11-28 10:46) 

Enrique

たこやきおやじさん,
当方が爪に常に注意していることは平面が出ている事ですが,特に爪の縦皺が増えてから注意しているのは面取りですね。
そうそうギターを弾くのに理想的な爪の持ち主というのはいなく,爪の削り方の工夫で凌いでいるという状況だと思います。
確かに指頭の柔らかさは弦を捉えるのに重要でしょう。カサカサに固くなると雑音が出そうです。
by Enrique (2020-11-28 22:35) 

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