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失われた技術〜規格争いの果てに〜 [科学と技術一般]

MDとDCCの話題を書いてコメントをいただきましたが,MDに関しても既に過去の技術で,DCCに至っては,名称すらご存じな方は多くないでしょう。ただ当方としては,過去の失われた技術の方が面白いと思います。
「勝ちに不思議の勝ちあり,負けに不思議の負けなし」
という言葉があります。肥前国第9代平戸藩主,松浦清の言葉だそうで,野球の故・野村克也氏の座右の銘だったそうです。負けには必ず理由があるから,それを分析すると教訓になるわけです。

エレキ関連の規格争いの最も有名なものは,家庭用ビデオ機器のベータ・VHS戦争でしょう。これに関しては古典的な話題ですので,詳細の言及は避けますが,技術陣の血の滲むような努力があったにせよVHSの勝利はまさに不思議の勝ちだったのでしょう。ベータの敗因は結果論としてはいくつか挙げられます。その後も,規格争いは繰り広げられました。

最近なら,電気自動車の充電コネクタとかデジタルテレビの放送規格とか。ブルーレイとHD DVDの規格争いももう既に忘却の淵にあります。規格争いに関しては,純粋な技術上の争いに加えて政治的多数派工作がものを言います。

ブルーレイとHD DVDどころか,もっと古い規格争いに,FD規格があります。当初8インチでスタートしたフロッピーディスクは,5インチ,3.5インチと小型化して遂には終わった技術ですが,現在でも専用ワープロで2DD媒体を使っておられる方がいらっしゃるようです。しかし,ここのどこに規格争いがあったか,もう知る方も少ないでしょう。ソニーの3.5インチディスクは,松下日立連合の3インチディスクと規格争いを繰り広げましたした。ベータ・VHS戦争がまだ生々しい中での争いでしたので,当初情勢は分からなかったのですが,流石にソニーはベータの二の舞は演じませんでした。国内勢だけでは勝敗情勢は不透明でしたが,3.5インチが巨人IBMに採用されて勝負がつきました。

その当時のエレショーに日立は3インチ規格の磁気バブルメモリを出展して気を吐いていました。バブルメモリというものも,一時期トランジスタ以来の大発明と言われた技術で,C.キッテルやF.ブロッホといった当代一流の研究者が関わった技術でした。完全に死んだ技術かというと,そうでもなく,放射線に強いので宇宙船内のメモリに使われていたとのことでした。半導体は放射線に弱いからです。

LDとVHDの規格争いもありました。やはり,第2のベータ・VHS戦争といわれたものでした。やはり,ソニーはパイオニアの開発したLD陣営で,松下ビクター陣営のVHDと対峙しました。これもソニーはベータの二の舞は演じませんでした。やはり冒頭の銘を噛み締めた結果なのでしょう。この時の敗者は,VHSの成功体験をそのネーミングにまで使ってしまいましたが,技術的な劣勢はいかんともできませんでした。レーザーで読み取るLDのデッキでCDも掛けられたのですから,互換性の面でもLDはVHDに優っていたのでした。

昔話をし出すと,いくらでも出てきそうなので,この辺で止めますが,現在も規格争いは,手を替え品を替え繰り返されています。

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