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楽譜が読めるようになるには?私案を思案 [演奏技術]

10年以上ブログを続けていますが,この件についてあまり触れてこなかったかもしれません。

難曲をバリバリ弾きこなすのに,単旋律の様な初心者向けの曲が弾けない人が不思議なのですが,まさに海苔漁師の徳永さん状態なのではと想像します。徹底して手に覚え込ませるようです。こういう方にとっては,曲の難易度とか余り関係ないのではないかと思います。音が少ないと技術は楽でも却って覚えにくいかもしれません。

しかし譜面が読めれば,絶対に有利だと思います。
易しい曲なら,初見で演奏できますし,難しい曲でも暗譜する前に弾けるようになります。

誰しもそうですが,苦手な事は避けがちです。
読譜が苦手でも,手の形を覚えれば弾けてしまうのがギターという楽器かもしれません。読譜をしなくても弾けるので,かえって暗号の様に見える譜面は見ない。見ると却って弾けないという現象が起こってしまうのでしょう。

譜面から演奏する人でも,暗譜する際は譜面を見ません。見てしまうと暗譜の意味が無いからです。譜読みしたら暗譜は済んでいるので楽譜から離れるという人もいます。その辺は人により程度差があると思います。

1)以下にギターを弾く人の読譜レベルを取り上げてみます。
①新曲を楽譜だけで音が取れる。
②新曲を楽器があれば音が取れる。
③聞いた曲なら楽譜見ながら音が取れる。
④聞いた曲をタブを見ながら音が取れる。

2)譜読みと暗譜レベルを取り上げてみます。むろん弾き込み練習は含めませんし,曲の難易度にもよりますので,例えばここではカルカッシOp.60程度としておきます。
①1回で譜読み完了。かかる時間は曲の時間の2,3倍程度。暗譜までは出来ない。
②2,3回で譜読み完了。かかる時間は曲の10倍程度。暗譜までは出来ない。
③小節単位で譜読み。かかる時間は曲の20,30倍程度。終了時はそこそこ暗譜している。
④拍(音)単位で譜読み。曲の100倍以上の時間がかかる。終わったころには暗譜がすんでいる。楽譜は見ない方が調子良い。

1)の読譜レベルと言っても曖昧なので,2)の譜読みと暗譜レベルのほうはもう少し定量的かもしれません。むろん暗譜力は記憶力や覚えようと言う意識の問題でもありますので,読譜力とは直接の関係は無いかもしれません。譜読みが遅い方が時間をかけますから,当然覚える公算が高いということです。

むろん1)と2)のどちらのチェック法においても①を目指すべきと思いますが,②レベルでも随分楽だと思います。というのは,かなり上手な方でも③,④タイプの方が多いのではないかと思います。

譜読みは早くほぼ初見で弾けても,暗譜ができなければ弾き込むことになります。一方,読譜が殆ど出来なくても終わった頃には暗譜が済んでいれば,暗譜前提ならば仕上がりに大差ありません。むしろゆっくりやって手を覚え込んでしまった方が,良い演奏になったりします。

譜面を読む練習は余りなされていないのではないかな?と思います。それは,上の様な事情で,譜面に強い弱いは特に独奏曲を暗譜レベルで弾く際はあまり関係なく(むしろ逆転現象に)なってしまうからだと思います。

難しめのギター独奏曲を初見で弾くのは至難の技です。読譜力のある人でも,そこそこの譜読み時間が掛かります。その上での弾き込み・暗譜となりますから仕上がりまでの時間は掛かります。しかし,もともと時間のかかる丸覚えタイプの人は難曲になっても掛かる時間はそう極端には伸びないのでしょうから,難しい独奏曲をばんばん弾きこなす人の中に楽譜を読めない人がいるのも,さほど不思議でもないのでしょう。

それでも,やはり譜面は読めた方がいいでしょうし,読める様になるには?という要望はあると思います。
しかし,ギター曲だけを弾いていても,なかなか読めるようにはなりません。また,習ってレッスンを受けているからと言って読めるようにはなりません。レッスン曲は,いい加減な演奏では合格をもらえませんから,正確に弾けるよう練習します。しかし,読譜力の向上にはつながりません。従って読譜は別に練習しないといけません。

私のお勧めは,いい加減でも良いので,たくさん弾きまくる事です。独学で始めた頃の当方がそうでした。
私はやっていませんが,以前聞いた話では,クラリネットの練習曲をやったという方がいました。ギターと音域が重なるので良いのだそうです。

私が曲がりなりにも譜を読んで弾けるようになった理由は,たぶん最初は歌謡曲の演奏です。伴奏ではなく,メロディを弾きまくります。後やったのが,オケのミニスコアの演奏です。ヴィヴァルディの四季ですとか,バッハの管弦楽組曲ですとか,第一ヴァイオリンのパート,第二ヴァイオリンのパート,フルートのかっこ良いところななどを飽きずに弾いていました。もちろん,パート演奏だけではあまり面白くありません。そこで,当時あった2重録音ができる英会話の録音機を使って,まず最初に伴奏を録音しておいて,そこにメロディをかぶせるなどの一人2重奏をやって悦に入っていました。現在は,2重録音でも3重録音でも比較的簡単にできますから,良い練習になるのではないでしょうか。

もっともその様な練習を繰り返していた理由は,あまりギターの楽譜が手に入らないからでした。それに,あまりギター曲も知りませんでした。ギターマニアの方々は,セゴビアのレコードから,耳コピで再現することもやったのではないでしょうか。学生の私には高いレコードも再生機もありませんので,出来るのは楽譜という楽譜をギターで弾いてみる事でした。

あと私が心がけていて,かなり重要だと思うのは,新曲をあらかじめ聴かない事です。
聴いて,音をアタマに入れてから弾くと,楽譜はただの補助的手段になってしまいますから,読譜力はつきません。あらかじめ聴くのは私はカンニングしているようなものだと思っています。

むろん,仕上げ段階で,有名プロがどう弾いているか参考にするのは良いと思いますが,最初から聴いて,演奏すると,それでは物真似演奏になってしまいます。上手な物真似演奏よりも,多少下手でも自分で譜読みした演奏の方が,読譜力にも今後の進歩にも良いと思います。むろん,好きなプロの様に弾きたいという欲望は否定しませんが。

ギターの独奏というのは,かなり特殊なものだと思います。
よほど易しい曲以外は初見がききません。むろん曲の難易度にもよりますが,プロでも事前に適切な運指を書き込まないとスムーズに弾けません。どうしても譜読みに時間が掛かりますので,ギター独奏曲のみ丁寧に弾いていたのでは,読譜力はあまりつきません。

ピアノを弾ける方は,新しい難しめの曲に取り組む際は,まずピアノで弾いてみて曲をつかんでしまう方が早いかもしれません。私の場合はピアノのレベルが低く,ピアノで弾いてもすらすらは弾けないので,どっちもどっちという感じですが。

あと思うのは,2重奏の片パートは,独奏よりも易しいことが多いので,両パートをどんどん弾けば,1曲で2倍分の読譜練習になります。読譜力は読む譜面の量に比例すると思います。知っている曲は仕方がありませんが,なるべく知らない,聴いたことのない曲を選びます。音質や音の出損ないなどは一切構いませんので,止まらずどんどん弾きます。技術練習は別にすべきでしょう。沢山やっていると,音符をみると自然に適切なポジションを押さえてすらすらと弾けるようになってきます。前も書きましたが,初見奏はもちろん,覚えていない曲の視奏は譜面の先読みが大事です。1,2小節先を読みながら,読譜していかないとスムーズに視奏出来ません。

私は余りやりませんでしたが,やはり譜読みに効果的な練習はやはりスケールとカデンツでしょう。よく使われる調の二長調やイ長調からスタートすれば楽ではないでしょうか。アルペジオの練習は楽しいですが,読譜力の向上にはあまりならないと思います。

調は,どうしてもハ長調から始めるきらいがありますが,ギターではハ長調ヘ長調は余り弾きやすくはありません。ヴァイオリンの教本を見てもイ長調から始めています。ヴァイオリンでもハ長調ヘ長調は弾きやすくないので,後回しにするようです。ただソルフェージュはハ長調からが基本でしょうし,ピアノもハ長調から始めますので整合はとれます。子供がいきなり弦楽器をやるよりも,楽器としてはピアノが先のほうが音楽のバランスは取れるのでしょう。

和音や速いパッセージなどは漢字を読む様に模様読みです。
セーハで出す和音はギターの4度調弦からの少しの変調ですから,それで読み取ります。コード弾きする方のコードパターンの覚えと近いのではないでしょうか。ただクラシックギター曲の場合,和音のコードフォームは変形したものや押さえる順番が大事な場合も多いですから,瞬時に読み取るのが難しい場合もあります。面白いことに,ギターの楽譜は,譜ヅラが易しいものの方が押さえが難しく,ヴィラ=ロボスの曲の様に,譜ヅラが複雑怪奇な方が易しい押さえだったりします。この辺の事情も,ギターの読譜の隘路なのかもしれません。

あと私の場合の視奏のコツですが指板を見ない事です(読譜の際はカンで移動しています)。楽譜から目を離して指板を見てしまうと,なぜか楽譜情報との整合が取れなくなってしまいます。

最近娘と家内がギターを始めました。
そこで面白いことに気づきます。彼女らは,ピアノでは十分譜面が読めます。ソルフェージュ(譜面のみ見て歌う事)もしっかりしています。彼女らの弾くギター譜はピアノ譜に比べたら単純なので,音はすぐにとれて歌いながら弾いていますが,とった音がギターのフレット上でどこにあるのか分からんと言っています。それなら,タブ譜が良いのかというと,むしろ逆で,場所だけ言われても何の音かわからないとどうしようもないから五線譜でないとムリだと言っています。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

楽譜の話は、おおむね同感です。(^^;
それにしても、奥様や娘さんまでギターを始めるとは。何か着々とEnriqueさんの「野望」が進んでいるような気がします。(^^;


by たこやきおやじ (2020-02-02 11:32) 

REIKO

何年もピアノを習っていて、そこそこ難しい曲を弾いているのに、ロクに楽譜が読めない例が結構あるそうで、弾いているだけでは読譜力がつかないのは、ギターに限った話ではないようです。
楽譜を使って音楽をやるなら、何より先に楽譜を読む訓練を徹底的にするべきなのですが(そうしておけば、その先どれほどスムーズに音楽が学べることか!)、読譜の勉強をないがしろにしたまま、楽器の操作だの特定の曲を弾くことなどに気持が向いてしまう人が多いのでしょうね。
もっともこれは学習者だけでなく、指導者側にも大いに問題がある点だと思います。

それで私の考えでは、楽譜(新曲)を見てどんな音楽か分かる、のが楽譜が読めるということで、ここでは(自分の得意な)楽器で音を出すことは含みません。
そう言うと「絶対音感がない人にそれは無理」なる声があがるのですが、階名(移動ド)+相対音感でちゃんと楽譜が読めるのです。
(実際、私はそうやってピアノの楽譜を読んでいます、弾く前に!)
しかし現在、この方法を教えている先生はごく少数で、多くの人は楽器に頼るか、楽器ができなければもう楽譜を読むこと自体を諦めてしまうようです。残念なことです。
by REIKO (2020-02-02 22:05) 

夢笛myu

読譜能力の中でも初見能力は、音楽を楽しむのに大変有用だと思います。
初見能力を身につけるいちばんの早道は、アンサンブルをすることです。
アンサンブルの相手は、できればギター以外の方がよいでしょう。
サンサンブル練習でギターを弾く時の心構えは、
1)間違っても絶対に弾き直しはしない、気にせずにどんどん行く。
2)ギター譜に記されている運指番号はとりあえず無視する。
3)初見で弾けないところは、とりあえず重要な声部(ギターの場合は概ね低音)のみ弾く。
by 夢笛myu (2020-02-03 13:00) 

浜っ子カルメン

楽譜を読む・・易しいようで私には難しいです。
初めての楽譜を読むことが出来ますが、
それを楽器無しで歌う事は出来ません。
初めての曲を楽譜だけで、声を発して歌う事が出来れば最高なんですけど・・

暗譜で弾くのと楽譜を見て弾くのでは音楽の捉え方が違う話を聞きますが、
これは楽譜に気を取られて体の動きが変わって音楽が崩れると言う事なんでしょうか・・??
講師は初めは楽譜で最終的には暗譜で弾く事を薦めていますが・・
暗譜を覚えると楽譜を見なくなります。(面倒くさいの横着者です)
暗譜を忘れた時、楽譜を見ても直ぐに弾けません!
やっぱし暗譜と楽譜は並行して弾くべきですかね。
by 浜っ子カルメン (2020-02-03 14:02) 

Enrique

たこやきおやじさん,
妻や娘の件については,読譜が完全な人間がギターを弾いたらどういう状態になるか?という一つの参考例として挙げました。
どうも彼女らは私の野望にのっているわけではなく,ただ好きでやっているだけの様です。私の勧めだと却って拒否することだろうと思います。
by Enrique (2020-02-03 14:30) 

Enrique

REIKOさん,
ピアノでもそうですかね。
譜面を読むスキルよりも楽器操作のそれが優先されてしまう。これは学習者のせいばかりではなく,指導者側にもあると。全くその通りだと思います。熱心に習っていて難しい曲が弾けても読譜が殆ど出来ない方がいます。逆説的にいえば,そういう方のやっている練習法の逆をやればよいだけだろうと思います。
指導者側としては,楽譜読める読めないに関わらず,楽器操作法のみ教えているという事になりましょうか。階名読みは鍵盤以上にギターのほうがより有効だろうと思います。特に大事なメロディやベースの動きなどに使うと有効だと思います。
移動ドにしろ固定ドにしろ,大人の生徒には譜の読み方を教える教室は少ないのですね。独学者の方に初見効く人がいる(当方も元独学)いうのは,まさしく逆説的です。
by Enrique (2020-02-03 14:51) 

Enrique

夢笛myuさん,
おっしゃること良く分かります。譜の読める方とのアンサンブルはすごく楽しいのですが,そうでない方とは正直苦痛です。普通メロディ楽器はよほどの曲でない限りらくらく初見が利きますから,アンサンブル相手には好適ですね。
アンサンブルの件は別に書こうと思っています。
むずかしい初見で指がついていかない場合は,口三味線でつなぐとか何とか胡麻化すとかやりますね。
by Enrique (2020-02-03 14:59) 

Enrique

浜っ子カルメンさん,
楽器なしで音が取れることは理想ですが,プロでも全部そういう方とは限らないと思います。
かつての日本を代表するギタリスト達(故人の名誉のために敢えて名前は書きません)が,武満の「不良少年」の三重奏の譜面見てもまったく初見で弾けず立ち往生したのだそうです。歌う事はおろか楽器でも弾けなかったのです。むろん誰かの演奏を聴いて練習すれば立派に弾けたのでしょうが。
直接経験した事例でも二重奏の練習をしている方々を聴いて「先生と生徒かな?」と,後で聞くと両方プロの方だったとかいうことがありました。素人はもちろんの事,プロと言ってもピンキリです。趣味で弾く分には,楽器で音が取れれば十分だと思います。
暗譜を忘れた後楽譜を見て弾けないというのは,手と流れで覚えている弊害ですね。最初楽譜を見て弾き出しても,一旦楽譜情報が手の時間情報に翻訳されてしまっているのでしょう。暗譜したつもりでも時々見直すことと,暗譜した譜面を書き出せれば完全でしょう。
視奏と暗譜奏の違いの件ですが,暗譜のメリットは左手を見て確認できることでしょう。当然ミスが減ります。ただ私は手を見ると忘れてしまうので,暗譜奏のときはずっと目をつぶって弾いていました。
by Enrique (2020-02-03 15:37) 

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