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「楽器の物理学」を読む(その12)(最終回) [楽器音響]

「楽器の物理学」の第III部,「第9章 ギターとリュート」をゆっくり見ています。今回は9.13節と9.14節が対象で,最終回とします。

ここでは,9.13「エレキギター」,9.14「フレットと補正」です。

9.13 エレキギター
何分,エレキギターは20世紀の電気楽器で最大の発明といわれます。ここでの1頁程度の記述ではとても書ききれない膨大な情報がネット上などにもあることでしょう。ここでは,楽器一般の中でのほんの概要説明に留まります。
楽器のタイプとしてソリッドボディとホローボディがあること,電磁ピックアップの種類,ハムバッカーの概要説明,ピックアップの配置位置とボリュームコントロール,ピエゾの圧電ピックアップ,エレキベースに触れています。この楽器を全く知らない人用の基礎知識でしょう。ピックアップに関しては,当ブログの兄弟ページでもう少し詳しい内容に触れています。

9.14 フレットと補正
悪名の高い「18の規則」に触れられています。フレットの刻み比率を平均律の半音音程1.05946に近い18:17の弦長比にするもので,例えば,弦長が650mmならば,1フレット目を駒から650mmの17/18の位置すなわち,613.89mmの位置にするやり方だそうです。順次残りの弦長の17/18にして行くと。しかし,このルールで正確に刻んでも,オクターブが12セントも低くなってしまいますので,非常に良くない方法です。電卓もパソコンもない時代ならいざ知らず(無い時代でも関数表はあったはずですが),数学に明るくない製作家向けの方法だったのでしょう。

図9.25.png

もっと驚くのは,「18の代わりに17.817を用いるべき」とありますが,これはまたとんでもない間違いです。どこで数値がずれたのか知りませんが,そんな比率でやったら全くまともな音階になりません。オクターブが全音以上狭くなってしまいます。17/18ではオクターブが僅かに狭くなるのですから,僅かに広く,18を18.01087にしないといけません。

あと,押えによる張力アップを補正するための弦長補正の話が書かれています。スチール弦では1mm~5mm程度,ナイロン弦ではほぼ必要ない,エレキギターでは個別の調整駒を備えていることなどが書かれています。

第9章はあと2節,9.15節「リュート」,9.16「その他の撥弦楽器」,9.17「一方に束縛のある駒」で終わりますが,いずれも歴史などの紹介のごく概要的な内容,最終節はシタールなどの駒の非線形挙動に触れたものです。それらは省略して,ここで終わることとします(了)。
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たこやきおやじ

Enriqueさん

フレットと補正は、どうして等比数列の計算で論じずに、17/18の近似数値を出しているのでしょうか。物理学なのに理解に苦しみます。(^^;
by たこやきおやじ (2019-11-18 11:56) 

Enrique

たこやきおやじさん,これは全く物理学ではなく,ギター製作者に受け継がれて来た秘伝です。しかしそれを解説したほうが,却って不正確な数字を出しているのはお粗末です。
by Enrique (2019-11-18 16:28) 

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