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「楽器の物理学」を読む(その2) [楽器音響]

「楽器の物理学」の第III部,第9章 ギターとリュートを見ることにします。

楽器の物理学

楽器の物理学

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2012/08/25
  • メディア: 単行本

第9章 ギターとリュート
前書きでは,現代のギターはビウエラからの発展とあり,Fernando Sorが巨匠の筆頭格である事,その後Torresが現代ギターに多大な貢献をしている事,Tarregaがアポヤンド奏法を取り入れた事,JanelとTurnbullが歴史的発展の一転機を果たしたとあります。

現代のギターはビウエラからの発展というのは,それで良いのかしらん?とやや疑問です。確かにビウエラは6コース弦ですが,リュート調弦ですし,別途ルネサンスギターやバロックギターがあったわけですから,そちらは先祖にはなっていないの?ということです。まあこの本は楽器の歴史ではなく,楽器の物理なのですから,ご愛敬としましょう。それと少々引っかかるのが,Janel(1981)とTurnbull(1974)の業績です。両氏が,SorやTorres, Tárregaらに匹敵する業績を果たしたのでしょうか?これに関して本文内で明確な記述は無いように見えます。

Janelは1981年に"Manual of Guitar Technology",Turnbullは1974年に"The Guitar from the Renaissance the Present Day”という書籍を出していることが参考文献に上がられています。いずれも立派な本の様で製作家などには有用なのでしょうが,「歴史的発展の一転機」とまで言えるのかどうか?研究仲間への外交辞令?なのかもしれません。

9.1 ギターの設計と製作
ここではよくある楽器の構造が示されます。ちゃんと?トーレスタイプのクラシックの楽器が示されています。楽器図鑑的な書籍でありがちな,様々なクラシック楽器を紹介しておきながら,ギターだけはフォークギターやエレキを紹介しているものとは流石に違います。専門的な研究成果をきちんと紹介している真面目な書籍だけのことはあります。

ギターの大まかな構造,ギターの調弦や材質について述べられた後,有名製作家の表面板のブレーシングパターンが示されます(下図参照)。
むろん,このパターンから即座に音響的意味を求めることは無理ですので,ここでは代表例の紹介にとどまっています(各論で詳しく議論されるはずです)。次節9.2ではギターを振動論的に連成振動系と捉えた研究成果が紹介されます(つづく)。 図9.2Small.png
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アヨアン・イゴカー

このようなものが、板の裏についているのですか?
響きなどに影響がありそうな気がするのですが?
愚問で申訳ありません。
by アヨアン・イゴカー (2019-10-29 21:18) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,
このブレーシングパターンが音への影響大有りです。
2,3ミリの厚さの表面板だけでは弦の張力を持てませんので,力木で補強しますが,この補強パターンが音質・音量に重要と言われています。
古典派,ロマン派の時代は,単純なパターンでしたが,19世紀に現れたアントニオ・デ・トーレスのファン型ブレーシングが現代の楽器の基礎を築いたと言われます。現代的な透明な音とサスティーンを持っています。
それ以後様々なパターンが製作家により工夫されています。
by Enrique (2019-10-29 21:31) 

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