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高速移動か停止時間節約か [演奏技術]

現在高校野球でも,球速150km/h以上のタマを投げる投手がいます。

球速が150km/hということは,手の振りもその速度が出ていると言う事ですから,凄いものです。

以前,ギターの左手の移動に関して,速度的にムリがあるのではないかと書いた事があると思います。しかし,野球のピッチャーの腕の振りくらいは限界速度として出せると考えれば,急速なポジション移動はどのくらいが可能かの目安が得られそうです。

例えば,「はちすずめ」のオクターブ移動。7フレットから19フレットに飛ぶ大移動ですが,距離にすれば650mmの1/3ですから,217mmほどです。

時速150km/hは秒速に直すと42m/sですから,これで単純にかかる時間を求めると,5.2ms程になります。

例えば,♩=180で16分音符一個の時間は83.3msですから,5.2msの移動時間は許容されそうな気もしますが,これはまずムリな速度です。いわばこの速度は腕の振りの最大瞬間速度です。ギターの左手の移動では,静止状態から移動後の静止状態まで,

 静止 ⇒ 加速 ⇒ 最大速度 ⇒ 減速 ⇒ 静止

としないといけません。さらに,ピッチャーは少なくとも2〜3mくらいの腕の振りは可能ですが,ギターの左手の場合,217mmほどの中で静止と加減速を行わないといけません。

上のプロセスで一番時間を食うのは,静止時です。ついで加減速時です。最大速度の時は一番時間を食いません。一番時間を食わない時にピッチャーの手の振り程度の速度を出して5.2msですが,ギターの演奏では速度半分程度として食う時間を倍程度10msと仮定しておきます。それに静止時間,加減速にかかる時間が加算されます。

♩=180での移動が可能であるとすれば,少なくとも83.3msの音価の半分40ms程度の移動時間なはずです。だとすると,移動をスムーズに無理なく実現するためには,移動の最大速度を上げて10msを5.2msに減らす努力よりも,40msに占める残りの30msを減らす努力の方が有利な訳です。仮に,移動の最大速度を下げて10msを15msにしても,残りの30msを20msに出来れば,トータルとして5ms節約できます。さらに極論すれば,静止時間や加減速に要する時間を0にできれば,移動の最大速度は1/4で済む訳です。もしそんな移動の演奏が実現すれば,超ゆっくり移動している様に見えるはずです。

Fig.1 静止・加速・最大速度・減速・静止を伴う移動
Fig.2 静止時間を伴わない移動
このことは,理屈の上だけでは無く,ある程度実現可能です。

急速に移動させて・止めて弾くのでは無く,低速な定速で移動させて・到着した瞬間に右手を弾けば,急速に移動・静止させる演奏よりもずっとスムーズに演奏できるはずです。このことを,「移動しながら弾く」という表現をされる方もいます。

極端な例を2つ示しましたが,体の動きも,急速に動かしたり急ブレーキをかけたりするギクシャクした動作よりも,拍節や音楽の抑揚に合わせた自然で無理のない体の動きの方が,より正確かつ音楽的演奏には肝要だろうと思います。
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