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自分なりの練習法を見つけること [演奏技術]

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自分の演奏を改善したいと思った場合,まず専門家の指摘を受けるのが上達の早道です。レッスンを受けることが一番良いと思います。

その上で,レッスンでの指摘点を踏まえ,演奏を改善するのは,自分自身ということになります。

例を挙げてみましょう。以下の曲で,リズムをムラなく弾く事を指摘されたとします(カルカッシのOp.60-15です)。



理想的な状態が自分で感じられて,そのように弾く技術があればすぐに改善できるわけです。レッスン現場で直すことが可能ならば,それが一番良いわけです。しかし,そのような曲なら,もう余り練習する必要もない訳です。どの段階であれ,練習曲をやるというのは,程度に応じた演奏技術なり音楽的課題なりを習得するわけです。したがって,その場でぱっと直せるという事は少なく,自宅練習ということになることが多いでしょう。また,仮にその場である程度修正出来ても,その違和感を無くし,自然に定着するにはある程度時間も掛かります。

そこで,自宅で練習する際の課題解決法を自分なりに持つ必要性を感じています。上の様な例で,均質に弾くための私の方法論は,逆療法的ですが,目いっぱい符点をつけて弾いてみる方法です。以前も書いたと思いますが,鍵盤の指練習Hanon教本をやる時のリズム・ヴァリエーションの一つですが,ギターでも非常に効果的だと思います。むしろ,ギターの場合単音を出すにも左右のシンクロが必要ですから,鍵盤以上に効果的だと思います。更に余裕があればリズムを逆パターンにも弾いてみるのが良いと思います。符点をつけて弾いてみるというのは,次の音とのつなぎに敏感になるということですから,レガート奏法にも有益です。

上のリズム・ヴァリエーションでは,オリジナルに少しストレスを加えて練習し,オリジナルに戻した時の正確性を上げる方法ですが,それとは発想が逆の方法として,リズムを正確にするために,崩れやすい箇所を単純化して弾き,段階的に持って行く手もあると思います。テンポを落としてゆっくり細部を練習するのは大事な練習ですが,ゆっくり練習だけでは自然なテンポ感でのリズム練習は,良く弾けるようになってからになってしまい,非効率な面もあります。

先日のソルのOp31-19の例で見てみましょう。この曲は連打がポイントですが,これに気を取られてしまうと,リズムの骨格が崩れてしまいます。そこで,私の方法は,最初(Step I)では連打を止めます。なお,連打音に相当する音は親指(p)で弾きます。


あら不思議,こんな簡単な曲だったの?
連打で苦しんだのは何だったの?

となります。これなら初見でも行けてしまう曲です。これで,拍節感,リズム,和音変化までをしっかり身につけるのが良いと思います。人によってはこれで暗譜も出来てしまうのではないでしょうか。記憶力の悪い私にはムリですが,とにかくはこれで快適に弾けたら,第1ステップ終了です。

次に,いきなり連打はムリですので,中間状態を設けます。以下はステップIIです。


殆ど難易度は上らないと思います。ここでも連打音に相当する音は親指(p-p-p)で弾きます。快適モードになったら,最終仕上げに移ります。ソルのオリジナル運指ならば,この状態にiを追加するだけ(pipip)で,次のオリジナル通りに弾けるわけです。


とはいえ,別途連打部分だけの練習もしておくべきでしょう。特にステップIIからステップIIIへの移行が大変です。本当はもう一ステップ入れられればいいところです。最初に連打部分のみを取り出してすんなり弾けるようになれば,曲の中にちりばめてもうまくいくとは思いますが,英語の勉強に例えれば,単語だけ勉強しても,文章の中で使われることを意識しないと,なかなか上達しないのと同じようなもので,部分練習したフレーズが曲の中にうまく嵌ってこなれる事が重要でしょう。

どんな曲でも初見で完璧に弾けてしまうような人は別でしょうが,いきなり弾き出すと,演奏の注意力はあれもこれもいっぺんには回りませんので,私は上の様な練習法をとることがあります。いきなり弾き出すよりも練習のポイントが絞られて却って時短になる様に思います。人によりこの手のノウハウは色々あると思います。
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Hagi

練習方法やレッスンの意味など、客観的に把握されている姿勢にいつもながら学ばせてもらうところが多いです。また共感するところも。次元が下がってしまいますが、レッスンは生徒にまず求める気持ちがないと効果はかなり薄くなってしまうように思います。(自分への反省ですが)。先生がギターを弾けるようにしてくれる訳ではなく、上達のヒントなり、音楽的な見方なり、自分では気づかないことを教えてくれるだけ。その後は相応の生徒自身の知恵(工夫)と努力が大事ですよね。ベースに求めている心が無いとそれらの教えは空回りするだけで終わってしまう。
コメント遅れましたが、少し前のソル20練の9番、10番、とても良かったです。キレがあり流れも良いように思いました。

by Hagi (2016-06-14 08:07) 

Enrique

Hagiさん,おはようございます。温かいコメント有難うございます。
私は未完成で挙げてしまう癖があります。実は前回の練習曲の演奏,リズムがだいぶ乱れていたので,改善するためにこの記事の練習法をとりました。

>レッスンは生徒にまず求める気持ちがないと効果はかなり薄くなってしまう
全く仰る通りだと思います。
例えて言えば,我々が医師に掛かるのは病気を治してもらいたいと思って掛かるわけですが,本当は体の治癒力が全てで,医師は手助けしているだけです。医療技術や薬も基本的にはそうでしょう。「薬を飲んで寝ててください」と言われて,薬飲まずに,酒など飲んでいたら治りません(むろん百薬の長でもありますが)。個々人の都合は色々あるはずですが自分なりに工夫してよりよい回復状態に持っていくわけです。医師に掛かるも意志,回復に至るも意志です。
レッスンを受け,自分の演奏を改善するのも自らの意志だということですね。
by Enrique (2016-06-14 10:55) 

REIKO

曲をより簡単に還元たものから練習し、出来るようになったら少しずつ部品?を戻していき、最終的に元の形でも無理なく弾けるようにする、というのは良い方法ですね。
手間が増えて面倒な感じですが、「急がば回れ」とはまさにこのことだと思います。
多くの難題が混在している曲にいきなり取り掛かると、悪戦苦闘した末に、何かグチャグチャにして終わり…になりがちですから。
私は練習曲以外の楽曲を選ぶ時も、できるだけ「(自分にとって)めんどくさい要素が1つだけ」のにしています。
例えば、初めて弾く作曲家だとか、弾けるかどうか微妙な部分が数小節あるとか…でもそれ以外は問題なさそう、という曲。
これだと気分的にラクな上、早く仕上がります。
その代わり「数をこなす」ことで上達する作戦(笑)です。
by REIKO (2016-06-14 20:27) 

Enrique

REIKOさん,コメントありがとうございます。
最初から様々な要素を全部一遍にやろうとして四苦八苦している事はよくあります。課題を一つに絞れれば良いのですが,中々それが出来ないものです。音楽的要素と技術的要素は本来は一体のものでしょうが,敢て切り離してみるのも重要な事でしょう。それも一種のアナリーゼだと思います。ソルの練習曲が,練習曲として批判される点は,音楽的(美し)過ぎて,技術練習に向かないという事です。純粋に技術練習を目指すならば音楽的に無味乾燥なもののほうが,そちらに気が行かずに純粋に技術練習になるという事です。
おっしゃるように,課題を絞って数をこなすのも,大事な作戦と思います。読譜力も上がりますしね。
by Enrique (2016-06-14 22:13) 

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