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D'Addario Pro-Arte弦のモデルチェンジ?(続報) [楽器音響]


先日の記事を書いた後,同社のwebページのHelp&Supportから問い合わせてみました。
D'Addario Strings

質問内容は,「パッケージが変わって,旧来のものに表示されていたテンションのデータが異なっているが,何を変えたのか?」聞いてみました。製造プロセスなのか,張力の測定法なのかと。

Sarah Blackmanさんという顧客サービスの方と,George Santosさんと言う製造主任?の方からすぐに(24hr以内)回答メールが来ました。なかなか速いレスポンスです。

メール内容そのものはコンフィデンシャルとの事ですので,ここに公開することは出来ませんし,そうはっきりとしたことを書いているわけではありませんが,回答の端々からやっていることは大体想像がつきました。

Sarah Blackmanさんからの回答の概要は,製造プロセスは一切変えておらず製品は同じものである。変えたのは,張力の計算であると。George Santosさんからも,プロセスはいじっていないという回答でした。

張力の測定ではなくて,計算というのがミソです。これは,張力を直接測定しているのではなくて,線密度を測定して,それから計算式で算出していることが分かります。計算式は,以前から挙げているものと同じもののはずです。実はピアノの弦のインハーモニシティを考慮した修正式もありますが,ギター弦の場合はもとの基本式と誤差範囲で十分一致しますので,基本式の方を使っているはずです。以下が,これまで何度か示した弦の基準音程ν[Hz]を示す基本式です。
基本式小.png

ここで,Lが弦長[m],Tが張力[N],ρが線密度[kg/m]で弦の長さ当たりの質量です。
以下がR. W. Youngさんと言う方が示した,インハーモニシティを考慮した修正式だそうです[1]。
修正式小.png
基本式の後ろにくっついたルートの中の1以降が修正項ですが,ここで新たに,弦の弾性率E[Pa]と半径r[m]が入ってきます。ここは短くてゆるくて弾性率の高いピアノ弦(アップライトの高音側など)では効いてきますが,ギター弦では全くの誤差範囲で,基本式の音の周波数と弦長,張力,線密度の関係はほとんどゆらがない様です*。

問題は,線密度の測定をどうやっているかです。太ささえ正確に出ていれば,モノフィラメントの方はナイロンの密度から算出できますし,現物の質量を長さで割り算すればOKですが,問題は,弦は張ったら伸びると言うことです。以前の計算でも,表示の直径とそれをそのまま使うとピッチに対応する張力は表示値以上に出ました。いくら張る前の線密度の精度が高くても,その値で計算するとずれて(高めに)出ます。

そこで,太さの表示は張る前のものだが,張力の計算は張った後のものなのだということが分かりました。張った後の弦の重さを測るのは困難なので,おそらく既定の張力に張った後の太さを測るのではないかと予測して,再度質問してみました。

伸びはどんどん進行します,すると弦はどんどん痩せます。「どの時点で測っているのか?直後か,1時間後か1日後か?」と聞いてみました。

Sarahさんが製品スペシャリスト達に問い合わせてくれたという回答は,張った後の測定はしていないとの事でした。実際に張った弦の張力を測定しているわけではないというのは,一回目の質問で分かりましたが,張った後の太さの測定もしていないということが分かりました。理由は,弦長や使われ方の条件が異なるからだとのことで,まあ納得できます。

おそらく張る前の線密度と,張った後の線密度との関係の実験式の様なものを使っているのでしょう。それは必ずしも物理的に正しい理論式でなくても,製品がカバーする範囲内で十分な精度があればいいわけで,一回目の質問で式を変えたと言っていたのは,そのような社内的な算出式なのでしょう。それで納得できました。


[1] M. French, D. French, and C. Zehrung, "Initial Behavior of Nylon Guitar Strings", Savart Journal 1(2013)
*一番ひどそうな,3弦の12フレットを押さえたとして計算してみますと,幅のあるナイロンのヤング率を3GPaとして約0.3セント,7GPaとして約0.6セントの上昇であり,誤差範囲だと思われます。これが同じ太さの鋼線でヤング率のみ考慮すれば,約17セントの上昇になりますから,全く無視できません。ただ,同じ音程を出すためには,重い鋼線の線密度に応じて張力も上げますから,それで計算すると,2.4セント程の上昇になります。
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