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息子に楽典を教える(7・最終回音源つき) [音楽理論]


高校生の息子に教え出した楽典のつづきで,7回目です。


今回は分かりやすいギターの曲で。
映画「禁じられた遊び」のテーマになった曲。イエペスが,それまでにあったギターの小品をこの映画のために弾いて一躍有名になった。
超シンプルな有名曲。必ずしも複雑なものが良いとは限らない例だ。
主要三和音のみで出来ているが,微妙なコードを使うよりもこのシンプルな和音の方が,かえっていたいけな子らの行為が際立つようにも思える。

この曲のキーはEmで最初の和音もEmになるが,なぜそう分かるのか?そうなるのか?その辺が初心の人だと疑問に感じるところだろう。

もちろん調号で分かる。#が一つならば,ト長調かホ短調。そして,Bから始まるこのメロディラインならばすぐにEm(ホ短調)とわかる。
禁遊前半.png

メロディとコードとはニワトリが先か卵が先かといった話だ。メロディが動けば,それを支えるコードは発生するし,コード進行があれば,それに応じたメロディができあがる。

かりに,調を決めないで,このメロディだけが先にあって,調号などの先入観が一切無いものとしよう。
前半のメロディだけ書き出すと,

| BBB | BAG | GF#E | EGB | EEE | EDC | CBA | ABC | BCB | D#CB | BAG | GF#E | F#F#F# | F#GF# | EEE | E

ここにつけるコードを検討しよう。
1小節目,BBBだけだとコードは確定しない。BBBだけだと,コードはBかもしれないし,Bmかもしれない。さらに,Eかもしれないし,Emかもしれないし,Gかもしれない。しかし,2小節目で,BAGと来たら,BとGはEmの構成音だから,ここで確定する。途中のAは非和声音だが,メロディラインをつなぐ音で経過音と呼ばれる。この辺はメロディとハーモニーとの違いだ。この様に仮に事前情報は一切なくても,いくつかの音のカタマリで,自然発生的にコードは形成されて行く。

3小節目4小節目もEm。
5小節目もE音なので前の小節からのEmのコードは変わりようがない。
6小節目1拍目はE音なので,Emのコードのままとすると,次のDとCは非和声音だ。ここを流れでEmのままで押し通すのがオリジナルだが,ここの小節もろともAmにしてしまうというコード付けもあり得るだろうし,最終拍のみAmにしている版もある。これ以上無いくらいシンプルな曲で,これ以外無いくらいコード付けがピッタリの曲であっても,コード付けには多少の自由度があるということだ。

7,8小節目は明らかにAm。
9,10小節目はB7。きっちりハーモニックマイナースケールでDに#がついている。
11,12小節目はEmにもどり,13,14小節目は再びB7。15,16小節目はEmに戻って前半終了。

後半は,Eメジャーに転調する。
禁遊後半.png

ここで,転調と移調の違いを述べておく。時々混同している人がいるが,これらは全く違う。転調は曲の途中で調を変える事であり,多くは共通音の多い近親調に飛ぶ。ポップスなどでいうサビの部分だ。曲を曲の中で変化をつけるための必然だ。それに対して移調は,歌の音域などに合わせて,キーの高さを相対的に調整する便宜的行為だ。だから音域が合えば必要はないし,むやみにすべきでも無い。

この曲は,後半Eメジャーになっても,ほぼ主要三和音だけで出来ている。すなわち,EとAとB7だ。この3和音の当てはめも容易に出来ると思う。

前も言ったが,コードおよびその進行を知らなくても十分演奏はできる。しかし,それを認識しているかどうかで,演奏も変わって来る。例えば基本的な話,ドミナントからトニックに向かう際,ドミナントをしっかり重みを付けて弾いて,トニックは軽く丁寧に弾く。大概そんなところは,フレーズだし,それを感じて弾くことになる。コードの変わり目は分かりやすく(そうでない場合もあるかな)弾くとか。文章を意味なくお経読みするのと,意味を分って読むのくらいの差があると思う。

さて,例に挙げた「禁遊」だが,普通に独奏で,メロディにベースとアルペジオの伴奏が入っているが,普通に弾いてしまうと分りにくいので,敢てメロディと伴奏分けて弾いてみる。前半後半とも,一回目はボローンという和音で伴奏して,こういう和音だということを強調してみた。繰り返しの二回目はテキトウにアルペッジオでやる。D.C.で戻る最後の部分は,色々混ぜてみた。


実際の楽曲では完全に3和音のみというのも少ないだろうが,これが基本であることは間違いない(と思う)。実際の曲をイロイロ調べて見るのが一番だろうが,キリがなさそうなので,この辺で終了する(おわり)。
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