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周期表とオクターブの話 [科学と技術一般]


年度が改まりましたので,少し学術的?な話を書きます。
以前,半導体の話を書いた時,以下のような元素の「周期表」というものを示しました。

periodic210.gif

化学の教科書の見開きなどに載っていた表です。
世の中を構成している元素の表で,自然に存在する元素では水素HからウラニウムUまで92種類の表です。
昔学生時代は,「周期『律』表」と習ったと思うのですが,今何を見ても,「周期表」となっています。確かに英語では,Periodic Table of the Elementsですから,「律」に相当するワードがありません。

訳としては不正確かもしれませんが,昔の呼び名「周期律表」の方が,生き生きとしたリズミカルな感じが伝わって来て良いような気がします。そのくらいの遊び心があってもいいのではないでしょうか。


オクターブの法則なるものがあるそうです。たとえば,原子番号が2番のヘリウムと10番のネオン,3番のリチウムと11番のナトリウム,6番の炭素と14番のケイ素などはかなり似た性質です。この事は,今日周期表の祖と言われるメンデレーエフの発見にも影響したものだと言われています。今日周期表としてまとめられたものを見れば,上下で同じ元素を「何族」とか言って分類しています。

しかし,ちょっと変です。
音階の方も8の周期で繰り返すのならば,オクターブには8つの音が無くてはいけません。

ドレミファソラシ ドレミファソラシ ドレミファソラシ

あれ,音階の方は7の周期です。確かに8つめで同じ音にはなり,オクターブを8度と言いますが,周期は7です。これは同度を0度と言わずに,1度と呼ぶからです。音程はいわば数え年で数えるわけです。

元素の周期表のほうはというと,2番のヘリウムを1番目として数えると,10番のネオンは9番目になりますから,数は1つ合いません。こちらは,満年齢で数えるわけです。


~の法則なるものが,そんないい加減なものでいいの?
そこは数学や理論物理などの精密科学との相違でしょうし,何分19世紀の話です。化学というのは錬金術に端を発する,実験科学なわけですが,唯一理論的予想で作られたのが周期表だとも言われます。「オクターブの法則」は遊び心であり,こじつけです。

しかし,これが単なるこじ付けとも言えない事が,20世紀に入り量子力学がつくられてくると分かってきます。
電子の軌道には整然と決まった電子数が入って行く訳ですが,なぜそのような入り方をするのかと言うと,電子の挙動を波動としてとらえれば,分かりやすい事に気がついた人たちがいました。物質波の概念を見つけたド・ブロイであり,記述法を見出したシュレディンガーという人などでした。

物質中の電子の振る舞いを,あたかも弦の響きのように考えれば,一見奇妙に見える電子のエネルギー準位構造だって,弦の倍音構造としてすんなり理解できます。実は元素がオクターブで性質が似るというのは,正鵠を突いていたのでした。

では,そこで起こった数えと満年齢のくいちがいは何でしょう?


オクターブは音の周波数が2倍異なることが重要であり,音の数でないというのがその解答でしょうか。
オクターブにある音は7つと決めてしまうと,古典化学のオクターブの法則と数が食い違ってしまいます。

ペンタトニック音階では,オクターブの音の個数は5個ですし,
平均律の半音で数えれば12個です。

他の音律では#と♭の音程が異なったりもしますから,細かい音程差も数えれば12個以上ありますし,特定の旋法を作れば,6つ(ドビュッシーの得意技)でも,8つでも,9つでも出来ます。近現代の作曲家はそれで遊びます。


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アヨアン・イゴカー

>物質中の電子の振る舞いを,あたかも弦の響きのように考えれば,一見奇妙に見える電子のエネルギー準位構造だって,弦の倍音構造としてすんなり理解できます
面白いところに共通点があるのですね。しかし、考えてみれば数字で厳格に表しているものには法則性があって、それが日常的に経験している現象と一致する、ということが他にもありそうな気がします。十進法から六進法、十二進法、六十進法などに置き換えてみると新たな事実が分かったりするのかもしれないと。素人の「大胆な」憶測にすぎませんが。
by アヨアン・イゴカー (2014-04-06 15:20) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさんnice&コメントありがとうございます。
マッド・サイエンスの様になってイヤなのですが,世の中は波動振動で成り立っていると言っても良いと思います。そして,それは物理的なものですが,数字はやはり女王で,自然現象のエッセンスを示しているのだと思います。もともと自然から湧き出して来たものですから,無限に自然を記述するものだと思います。
by Enrique (2014-04-06 19:14) 

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