SSブログ

ギターで弾くバッハ~その他~ [曲目]

ギターで弾くバッハとしては,リュート作品,無伴奏ヴァイオリン作品,無伴奏チェロ作品が代表的なものですが,その他としては,まず鍵盤作品があります。

バッハの器楽曲としては,鍵盤作品が圧倒的に多く,BWV772-801「インヴェンションとシンフォニア」に始まり,イギリス組曲,フランス組曲,パルティータに,「ウェルテンパード(平均律)鍵盤曲集第1巻,第2巻」,「幻想曲とフーガ」,「イタリアン・コンチェルト」,に本物のコンチェルト16曲を含んで,リュート曲の直前BVW994までがクラヴィーア曲です。オマケにBWV525-771までのオルガン曲を入れたら曲数的にはバッハの作品の半分ぐらいが鍵盤曲と言ってもいいくらいです。

これらバッハ作品の中核を占める鍵盤作品を,「その他」にするというのもズイブンなのですが,ギター独奏で弾くとなると,まず「技術的に弾けない」のでこういうことになります。ギターに近い,リュート曲,ギターよりも多声には制約のきつい4本弦のヴァイオリン曲やチェロ曲を弾くのでさえもさほど楽ではないわけですから,鍵盤曲をギター独奏で弾くにはかなりの制約が付きまといます。もちろん,2重奏,3重奏にアレンジすれば,音域の問題さえクリアすればどんな曲でも弾けますが,ここではやはり独奏へのトランスクリプションを前提に考えます。最高技巧のギターデュオ,アサド兄弟あたりレベルで何とかなるようでは,次元が異なってしまいます。

「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」に入っている曲,これなどは,シンプルな曲が多く,ギターへのトランスクリプション向きで,すでに編曲譜としてあります。
IMG_1341
IMG_1340
しかし,これがギター教室などで使われたという話をあまり聞きません。ちょこっと弾いてみますと,これでも決して弾きやすくはありません。シンプルとはいえ鍵盤曲なので,技術的には少しきついです。しかし,いきなりリュート組曲などに行くよりも,バッハ入門曲として使ってもいいのではないかとは思います。

あと,フルート曲です。無伴奏ヴァイオリン,チェロと並んで多声に関してはさらに制約の多い単音の疑似ポリフォニーです。無伴奏曲はパルティータ イ短調1曲のみですが,チェンバロ伴奏,通奏低音とのものは数曲あります。これらから,D. ラッセルやD. アザバジッチが編曲演奏しています。D. ラッセルの楽譜(BWV1034の編曲)があります。ラッセル編というとすごく大変そうですが,これホ短調のためか,わりと弾きやすくなっているようです。

それから,忘れてならないのが,J.エトヴェシュのゴールドベルクですね。

ギターによるゴルトベルク変奏曲

ギターによるゴルトベルク変奏曲

  • アーティスト: エトベシュ(ヨーゼフ),バッハ
  • 出版社/メーカー: キング・インターナショナル
  • 発売日: 1999/12/23
  • メディア: CD

これは驚異的な編曲&演奏です。並の鍵盤曲でも困難と言っているのに,鍵盤でも難曲のゴールドベルクを完奏するのですから,タダモノではありません。ハンガリーには時々天才的な数学者とか出ますが,エトヴェシュさんもそう言う人なのかなと思った次第です。

山下和仁さんの「展覧会の絵」もすごかったですが,あちらが掻き鳴らしその他ギター的な処理だったと思いますが,こちらのアーティキュレーションによる聴覚の錯覚まで使った多声の処理など殆どマジックです。

あと,コラール等の編曲演奏もあるわけです。やはり,ラッセル編のものなどがあります。

「ギターで弾くバッハ」はニアミスのリュート曲くらいがいいところで,オリジナル曲は無いのですが,逆にいえば,何でも弾けるという可能性もあります。今日バッハを「鍵盤曲」としてピアノで弾くと言うのは普通ですが,やはりオリジナルではありません。バッハの当時ピアノという楽器はありませんでしたから。一方,今日バロックギターと呼ばれるギターはバッハの時代にもありましたが,スペイン中心でヨーロッパ各地にあまり普及していませんでした。今日のギターでリュート曲を中心にバッハを弾くのも,「指板曲」として良しとさせてもらいましょう(このシリーズ終わり)。

nice!(3)  コメント(8) 
共通テーマ:音楽

nice! 3

コメント 8

Cecilia

ギターで弾くバッハ、素敵だと思います。
ギターの講座ではありませんが私もglennmieさんも参加しているバッハの講座、Enriqueさん向けだと思います。(笑)
その先生の最近のブログです。
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/1b01d0b11c302c78196e49c351829c1b
この先生とギタリストの斎藤明子さんは非常に親しい関係なのですが、「アンナ・マグダレナ~」も演奏なさっているようですね。
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/d316126b48bb9a556e8cab51e1da9011
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/e44c3fc25e816d2e68d816acb6f33058
by Cecilia (2012-11-21 10:07) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメントありがとうございます。
ギターはちょうど弦楽器と鍵盤楽器の中間くらいに位置し,音ば伸びない代わりに鍵盤ほど自由ではない代わり,音に表情があります。バッハは鍵盤でもクラヴィコードを好んだといわれますので,ギターの様な音の表情は決して嫌いではなかったはずです。まあ,そこはどうとも言えませんが,オリジナル楽器とは言っても,全部当時とは異なっていますね。
「バッハ講座」,近くなら参加してみたいところです。
ピアニストや作曲家から学ぶというのも,技術面ではギタリストからは決して指摘されない無理なところもありますが,だからこそ学ぶべきところも多いと思います。
「アンナマグダレーナの音楽帳」はいい大人がというかんじもありますし,鍵盤ではやさしいのにギターで弾くのは損な曲であることはたしかです。余程上手な人しか弾けない曲ですね。
ご紹介の記事の「アンナマグダレーナ」は,バッハのチェロ組曲の1番・2番をアンナマグダレーナ写譜版を使ったという事の様ですね。2番目の奥さんであった彼女は大変夫に献身的で,筆跡もバッハのものに近い位の出来だったようですので,オリジナルに近い形なんだろうと思います。
楽器を移すにあたってはアチラに合わせるか,こちらに合わせるかしかないわけですが,ヴァイオリンやチェロの場合は結構あちらに合わせられますが,鍵盤の場合はごくギターに合う曲しかムリですね。
by Enrique (2012-11-21 17:37) 

Cecilia

>ご紹介の記事の「アンナマグダレーナ」は,バッハのチェロ組曲の1番・2番をアンナマグダレーナ写譜版を使ったという事の様ですね。

ご指摘ありがとうございます。
(急いで書くとロクなことありませんね。)
アンナマグダレーナは確かに易しい曲が多いのですが、いい大人がとは思いません。確かに易しいと思われている曲でもほかの楽器だと難しいこともありますよね。易しいイメージが定着していると敢えてそういう曲を選択するのは損な感じがしますよね。
by Cecilia (2012-11-22 08:20) 

Enrique

Ceciliaさん再コメント,ありがとうございます。
コメントのおかげで,斉藤明子さん通してギターとの接点が見つかりました。
バッハではないですが,ギターで有名な鍵盤曲に,ヘンデルのサラバンドがありますが,セゴビアが弾いて有名になった人気曲です。これも鍵盤ではアンナマグダレーナ程度の易しい曲ですが,ギターでは結構難しいです。声部のつなげとか,鍵盤なら手を置いておけばいいだけでも(ペダル使えばもっと容易),ギターでは他音部のからみで左手が厳しかったりで,息も絶え絶えの演奏になりかねません。こういう鍵盤曲を弾くのは結構覚悟がいります。
鍵盤曲をギターで弾くのは,アルベニスやグラナドスの様に,ピアノでは難しく,むしろギターのほうが楽といったものの方が気持ちも楽ですね。
by Enrique (2012-11-22 12:49) 

黒板六郎

なんにせよバッハを弾くのは、大きな喜びであると同時にすんごい畏れを感じますね。それくらい巨大な存在です。つくづくギターでバッハが弾けて幸せです。
by 黒板六郎 (2012-11-24 22:50) 

Enrique

黒板六郎さん,コメントありがとうございます。
鍵盤でバッハ(関連)のやさしい曲を弾くのは,子供でもしていることなのですが,ギターで弾くとなるとぐっとハードルが高まりますね。
でもそんなに畏れないのが良いと思います。
by Enrique (2012-11-25 23:44) 

Cecilia

某所でまた本を何冊もゲットしたのですが(詳細を書くと今自分がしていることを公表することになるので敢えて記事にはしません。何冊もらっても無料。一応カンパしました。)、自分には使えないのについついバッハのリュートのための作品集という楽譜をもらってしまいました。
この方のブログにあるこの楽譜です。
http://tobetobe-tobe.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-acb5.html

by Cecilia (2012-12-10 08:22) 

Enrique

Ceciliaさん,情報提供ありがとうございます。
私はこれ持っていないですが,かつてバッハのリュート曲をギターで弾くには(リュートで弾くにも!)かなり貴重な資料だったようですね。ギターで弾くには便利なものでしたが,むしろ標準調弦のリュートでは弾けないという。
私がギターを開始した40年近く前には,中々よい楽譜が無くて,やっとこさ現代ギター社から原典ファクシミリ付きのギター編のリュート曲全集が出たのにたぶん皆さん飛びついた,そんな時代でした。といってもそうそう弾けるものではなくて,なんとか易しい舞曲を拾いびきするくらいのものでしたが。
by Enrique (2012-12-10 22:14) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。