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ギターで弾くバッハ~無伴奏ヴァイオリン曲編~ [曲目]

ギターで弾くバッハとして外せないのは,ヴァイオリニストの聖典とも言える無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータの6組曲です。

この曲に関してはものすごく語られていることと思いますので,ここではギターで弾く観点から素朴に眺めてみたいと思います。

まず,素朴な疑問が,なぜ,ヴァイオリン曲がギターで弾かれるのか?ですね。以下の様な理由が考えられると思います。

・楽器として近いリュートのための曲がギターで弾かれる
・BWV1000やBWV1006aのように,ヴァイオリン曲からリュート曲への編曲が見られること
・リュートのみならず,鍵盤曲などへの編曲も見られること
・バッハの曲が,あまり特定の楽器に依存したものではないこと

あと,「無伴奏」というのは,ヴァイオリンなどの無伴奏曲っていうのは,ギター独奏と同じ考え方であるという点です。これは何もバッハに限った事ではなくて,パガニーニのヴァイオリン用のカプリースをギターで弾くのと同じようなものです。

バッハの無伴奏ヴァイオリン曲はBWVの1001番から1006番までに分類整理されています。

BWV1001,無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調です。
第2楽章のフーガはリュート曲としての単一のフーガBWV1000にもなっています。

BWV1002,無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番ロ短調です。ヴァイオリン譜そのままで,ギター譜のように見えます。このサラバンドあたりは,ギターによるバッハ入門曲として使われますが,原曲のヴァイオリンでは和音が難しいと思います。この曲はパルティータ(組曲)なのですが,プレリュードでなく,アルマンドから始まり,クーラント,サラバンド,ブーレ各曲にそれぞれ一種の変奏ドーブルがつきますのでドーブルとセットなら4曲,バラせば8曲と見なせます。

BWV1003,無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調です。鍵盤用の編曲BWV964もありますが,バッハ自身の編曲かどうかアヤシイとのことです。第2曲に長大なフーガがあります。鍵盤なら,楽勝でしょうが,これをタチアナ・リツコヴァさんがギターで気持ちよさそうに弾いている動画を見てオドロキました。

BWV1004,無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調です。ギターでも6弦=Dでニ短調で弾かれる事が多いようです。アルマンドから始まる5曲ですが,この終曲,シャコンヌが単独で余りにも有名なわけですが,これに関しては以前少し書きました。

BWV1005,無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調です。やはり長大なフーガがつきます。

BWV1006,無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番ホ長調です。プレリュードに始まってジーグで終わる6曲で構成された典型的な組曲形式です。これは,リュート組曲第4番BVW1006aとしても有名で,ギターでの弾きやすさ(決してやさしくはないですが)と相まって人気曲です。このプレリュードは,ヴァイオリンとリュートだけでなくて,オルガンとオーケストラのためのコラールのシンフォニアBWV29 にもなっています(このギター二重奏の楽譜があります)が,古今人気曲だったようで,サンサンーンス,ラフマニノフによるピアノ編曲でも有名です。後者はプレリュードだけでなく,ガヴォット風ロンド,ジーグまでありけんらん豪華なものです。

譜面はやはり現代ギター社のヴァイオリン曲全集の80年ごろ出たものもありますが,オリジナル譜は持っていません。真面目に取り組むならヴァイオリン譜も用意しておかないといかんと思いつつ,現在ではIMSLPでいつでも見れるという安心感で買ってません。シャコンヌ単独では何種類か編曲譜があります。私が弾いた時はセゴビア編を使いました。ブゾーニのピアノ編をベースにしたイエペス編ほどではないしろ,かなり音は多いですね。ヴァイオリン譜そのままだとあまりにもそっけないですし,音が多いから難しいというものでもなくて,好みも分かれるところだと思います。

BWV1002がひきやすさで,BWV1004が超ド級のシャコンヌで,BVW1006がリュート曲(というか殆どギター曲)として華やかなためか,パルティータの方がギター曲としては人気が高いように思います。BWV奇数番目のソナタの方は,玄人っぽい感じがします。

これをソナタとパルティータを楽々全曲弾ききってしまうような人は,ヴァイオリンなら普通でしょうが,ギターではあまりおらず,山下和仁さんとかのハイパーギタリストに限られるでしょう。

J.S.バッハ / 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ (全曲)

J.S.バッハ / 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ (全曲)

  • アーティスト: 山下和仁,バッハ
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2004/11/24
  • メディア: CD


バルエコは完璧な技巧でソナタの方を3曲弾いています。上手すぎてつまらないという意見もありますが,リファレンス演奏として価値はあるでしょう。

バッハ・リサイタル

バッハ・リサイタル

  • アーティスト: バルエコ(マヌエル),バッハ
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1997/09/10
  • メディア: CD


シャコンヌ単独で人気曲のためか異常に録音は多いです。村治佳織さんのバッハアルバムにはシャコンヌを含むBWV1004全曲が入っていました。

Kaori Muraji Plays Bach

Kaori Muraji Plays Bach

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: UNIVERSAL CLASSICS(P)(M)
  • 発売日: 2008/10/29
  • メディア: CD



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コメント 8

黒板六郎

佳織さまとバルエコさまを個人崇拝しております。バルエコさまにおかれましては、ほんとにおんなじ人類なのかと思ってもおり、畏敬の念を抱いておりまする。
合掌。
by 黒板六郎 (2012-11-17 06:09) 

Enrique

黒板六郎さん,コメントありがとうございます。
ここに上げたような人たちには,好き嫌いややっかみ半分の批判がある場合もあります。山下さんは一時代を築いた人ですし,村治さんはクラシックギターのイメージをフレッシュなものに変えてくれました。
私がクラシックギターを再開したのはTVで見たバルエコのリュート組曲4番とアルベニスのスペイン組曲でした。上手すぎてとても真似もできませんが,そう意味で恩人ですね。
by Enrique (2012-11-17 06:27) 

REIKO

バッハの無伴奏モノは、色々な楽器編曲の格好のターゲットになっていますが、和音が得意で(テクニックさえあれば)細かな音の動きに向いている楽器はヴァイオリンの方、そうでないのはチェロの方に向かうようです。
ギターは前者の典型で、和音が出せない管楽器はほとんどチェロの方をやっていますね。
初音ミクもチェロ向きでしょうか。(笑)
バッハは現代楽器に移すとモダンな印象が際立ち、原曲より数等オシャレ~♪になるのが本当に面白いと思います。


by REIKO (2012-11-17 16:18) 

アヨアン・イゴカー

名曲は、楽器を変えても名曲ですね。無伴奏バイオリンソナタとパルティータ、ギターでもとても美しいですね。どちらの音でも、直ぐに頭の中で自然に鳴り響きます。
楽器を変えて演奏することは、角度を変えて絵画を見ることに通じていて、新しい発見がいくつもありそうです。
by アヨアン・イゴカー (2012-11-18 15:11) 

黒板六郎

チェロのギター編曲のやつアンドレアスナントカさんの聞きました。バッハだから素晴らしいのもありますが、まるでギター曲のような演奏にも感動しました。6番のプレリュード!いつか弾きたい名曲ですね。
by 黒板六郎 (2012-11-18 16:50) 

Enrique

REIKOさん,コメントありがとうございます。
確かに「シャコンヌ」の編曲演奏ではギターはすでに古株になっていて,聞き易いと思います。ひょっとしたら,リュートやギターがオリジナル?とまで言われますが,やはりバロック・ヴァイオリンがオリジナルでしょうから和音は出し易かったのでしょうね。
確かにチェロの方は単旋律でも行けそうですが,ギターで弾く場合は音が足りないので,カウンターノートをかなり入れますね。
大雑把な言い方ですが,どの曲も音の骨格が強いかんじです。チェロのサックス版はかっこ良かったですね。
by Enrique (2012-11-18 18:43) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,nice&コメントありがとうございます。
そうですね,Bachは楽器を変えて弾いてみるのも新鮮な発見があって楽しみですね。
Bachは鍵盤曲がクサルほどあるのに,わざわざヴァイオリンパルティータをチェンバロやピアノに編曲して弾くのも面白いところです。
by Enrique (2012-11-18 18:47) 

Enrique

黒板六郎さん,コメントありがとうございます。
チェロ編もアップしますが,あの演奏まことに自然なものでしたね。無伴奏ヴァイオリンよりも大味ながらああいう演奏を聞くと,ギターにも向いているかんじがします。
1006のプレリュードを天を駆ける様に弾くのは大変です。ジョン,バルエコ,(後私)のを聴いていた妻が,上手ねぇと言っていたのは,渡辺範彦さんのでしたね。
by Enrique (2012-11-18 18:56) 

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