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ロスト・テクノロジー [雑感]

ヴァイオリンのストラディヴァリウスや特殊刀剣のダマスカス鋼,日本刀の作成法など,ある時期の社会的要請に基づき高い技術で作られたものの,さまざまな事情でその技術が伝承されなかったために後世の人がそれを再現できなくなってしまっているものを「ロスト・テクノロジー」というようです。


ヴァイオリンの音の良さは,関係者にとっては大変な金額をかけるほどの意味があっても,その良さは官能的・感性的な量であり,定量化は難しいので,テクノロジーにはのりにくい面はあるかもしれません。むしろそのことがより神秘性と価値を高めるようです。以前紹介したように新技術を用いた解明の試みがいまも行われます。

当時から評価が高かったかどうかは分かりません。むしろ当時は評価されなかった,次ぎに来たものが良くて古いものや身近なものはつまらないものとして忘れ去られてしまったということもあるかもしれません。しかし,実は国際基準,もしくは長い時間スパンで見たら非常にすぐれたものだったということは時々あるようです。


20世紀特に後半はエレクトロニクスの時代でしたが,コンピュータ化に伴い,世の中のエレクトロニクスがどんどんデジタル化しています。そこで心配なのがアナログ技術の重要な部分の消滅です。アナログでは困難だったことがデジタル技術の進展で,簡単に安価に出来る様になったことが沢山あり,それがデジタル化の進行の大きな要因です。

しかしながら,逆にアナログ技術ならごくシンプルに出来ることが,一定に複雑化することが欠点です。それからデジタルでは半導体素子を駆動するために電池や電源が必ず必要になります。

もっと本質的な問題としては,たとえば,ごく微弱な電圧や電流の計測などの分野です。アナログでは独特な工夫で測定していたものが,デジタルでは信号処理的にやろうとしますが,アナログ的に拾えないものをデジタルで頑張ってもどうしようもありません。デジタル技術は,取り込まれた情報は上手く処理出来ますが,無い情報を補うことは出来ません。それをやると,限りなくデータの改ざんになってしまいます。

従来はペンレコーダでチャート用紙に直接描かれた波形なども現在はすべて数値データになっているので,コンピュータ上で改ざんが容易に出来てしまい,真偽の判定が困難になってしまいます。
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Cecilia

ストラディバリウスコピーのヴァイオリンが何百年も経ったら現在のストラディバリウスに匹敵する音色になるのか、とても気になります。(ストラディバリウスコピーもいろいろありますね。笑)
by Cecilia (2011-09-25 09:15) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメントありがとうございます。
300年ものエージングの効果もそうですが,かつてはニスの配合などに秘伝があって,現在では決して再現できないという考え方もありました。しかしニスの件は振動学的にはほぼナシ,エージングは300年も必要かどうかは別として確かにアリ。最近の研究では,その時期の楽器がヨイのは,その時期が寒冷期で木目が均質で詰まった材質が使えたからだというのがありました。だとすると,その頃の材質を使わない限り形だけコピーの楽器は何百年経ってもムリという結論になります。
by Enrique (2011-09-25 09:40) 

アヨアン・イゴカー

アナログは大切ですね。総てデジタル化することは危険だと思います。
デジタルとは数字による暗号化のようなものであり、一見して分かるものではないからです。
緊急用の情報は、インターネットだけでなく、ハードでも用意しておく必要があります。電気がなかったり、通信網が分断された時、全く力を発揮できませんから。

by アヨアン・イゴカー (2011-09-25 23:27) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,nice&コメントありがとうございます。
おっしゃる通り,デジタルは語源からして指を表す数字ですね。直感的に見てわからないです。アナ/デジは本来は相補的なものですが,現在の技術で簡単だからと何でもデジタルにしてしまうと,アブナイですね。殊にバックアップには。私自身,手帳をiPhoneにしていましたが,非表示になっていたのを消えたと思い大変焦りました。紙のものも持っていないとアブナイです。これも一種のアナログ・ハードウェアですね。
by Enrique (2011-09-26 08:20) 

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