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節電の具体策(待機電力について) [科学と技術一般]

家庭内の消費電力の大きそうなものを見てきました。消費電力[W]と時間[h]の掛け算が積算電力量(kWh)になりますから,消費電力が大きく使用時間の長いものが節約のし甲斐があります。

電力(パワー)というのは,承知の通り[W]で測ります。その1000倍が[kW]です。これは単位時間[s]あたりの仕事[J]で仕事率[J/s]のことです。これをジェームズ・ワットさんにちなんで,ワット[W]と名づけられました。仕事(もしくはエネルギー)に戻すにはこれに時間を掛けます。これを積算電力量(あるいは単に電力量)と言います。SI単位系では[J]もしくは[kJ]を使うべきですが,電力量としては小さすぎますし,ピンとこないので,電気の分野では[kW]に時間[h]を掛けて[kWh]という単位にしたのですね。1kWh=3600kJと言う事になります。

よくあるマチガイが,[kwh]と書いているものです。単にWを小文字にしたというだけではなくて,どうも単位の成り立ちの認識が薄いように思います。電力量の単位という認識があれば実際上問題はないのですが,電力量[kWh]と電力[kW]との混同も見受けられます。当然両者は異なる物理量で,上に書いたように電力量は仕事[J]で電力は仕事率[W]です。これらの混同は,速度[km/h]と距離[km]を混同するようなものですが,案外この誤解は多いのですね。

ようは速度[km/h]に時間[h]を掛けると,走行距離[km]が出るように,電力[kW]に時間[h]を掛けると積算電力量[kWh]が出て,この量に応じて電気代がかかるという事です。この量は,各戸に電柱からの引き込みの所についている積算電力量計で測定されています。これは使用電力に比例した速度で回るアラゴの円盤と呼ばれるアルミ円盤が何回回ったかで積算表示されています。なお,ここにコザイクなどをすると窃盗罪で訴えられます。


消費電力[kW]がさほどでなくても,年中・四六時中動かしっぱなしのものは,積算電力量[kWh]が多くなります。その最たるものは冷蔵庫でした。

今回は待機電力について考えてみます。何分,使用中でもないのに,年中さしっぱなしの機器類は沢山ありますが,この「待機電力」はバカにならないとよく言われます。それで,使っていない家電品はコンセントを抜いておいた方が良いと言われますが,このバカにならない量というのは,どの程度のものでしょうか?限りなくゼロに近いのなら,手間を考えればさしっぱなしでも問題ない(むしろプラグ等傷めない)かも知れませんし,多いものならば,多少手間でも実行しない手はありません。

多くの人が使うモノとして,ケータイ充電器でしょう。1マイクロ・ワットでもムダな電力使いたくない人は抜くのがお勧めですが,限りなくゼロだったら手間だけムダということになります。充電しない時にコンセントから抜かないでいるとどのくらい電力を消費するのでしょうか?

ワットメーターは持っていないので,簡便な方法として,手元のハンディ・マルチメーターで電流を測ってみました(通常のテスターではムリかもしれません。電流を楽に測るためテーブルタップを小細工しています)。この電流値に電圧100Vを掛け算すると消費電力が求められます(この値は正確には「皮相電力」というもので,一般家庭で電気料金の対象になる「有効電力」よりも必ず大き目に出るという前提で消費電力とみなせば問題無いでしょう)。以下1kWhあたり22円として,1か月(30日)分を計算します。

S社のケータイ充電器は,2.68mA×100V=268mWです。1か月差しっぱなしにしておくと,268×0.001×0.001×24×30×22円=4.2円也。
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iPhoneの充電器は,396mWです。1か月差しっぱなしにしておくと,上と同じ計算で6.3円也。
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MacBook Airの充電器は713mWです。同上1か月で11.3円也。
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Vaioノートの充電器は949mWです。同上1か月で15.0円也。
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BluLayディスクドライブの電源アダプタです。本体はつないでいません。普通こんな事はしないと思いますが,932mWで,上と同程度ですね。
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USB接続のBluLayディスクドライブをつないでスタンバイ状態。普通はこういう状態で待機でしょう。2.3Wに上がりました。同上,一か月36.5円程になります。
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USB接続のハードディスクドライブをつないでスタンバイ状態。外付けHDDも普通こういう状態で待機でしょう。これも,電源アダプタのみでは1W弱ですが,3.88Wです。同上,一か月61.5円程になります。
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これ以上測るのがメンドウになってきましたので,ネット検索してみると,待機電力に関する情報がありました。平均的には一家庭月数百円分,年間数千円分の待機電力による電気代支出があるようです。これらを大きいとみなすか小さいとみなすかですね。

上で測定したように,HDDは家庭内の待機電力としても大きなものの部類ですね。しかし,先日妻が待機電力貧乏症を発病し,韓国ドラマの録画がうまくいかなかったと悔やんでいました。HDDの電源を抜いてしまったら,予約録画が出来るわけがありませんね(合掌)。

上のページによれば,平均的な家庭で待機電力は消費電力の6%程度あるそうです。
これを確かめる最も確実な方法は,各戸に必ずある積算電力計のチェックです。当家のものは円盤が500回転で1kWhの積算電力量ですから,これの1回転に要する時間[秒]を計り,1÷500×3600÷時間[秒]で待機電力[kW]が出ます。

なお,冷蔵庫は今の時期定常的に大電力を食っていますから,このチェックをするときは一時的にコンセントを抜いておきます。
その際,1回転に何分も掛かるようだと,その間に止めた冷蔵庫の中のものがパーになってはいけません。電力量計の回転がベラボーに遅い場合は(大変うれしい事ですが),円盤の上部に目盛りが付いていますから,例えば1/10回転の時間を測って10倍すればOKですね。下の場合円盤1/2回転で84秒でしたので,1回転に要する時間は168秒です。
IMGP0105.JPG

気をつけているはずでしたが,1回転168秒の消費電力を上式で算出したところ,約0.043kWすなわち43Wでした。当家では平均電力消費は417Wほど(1ヶ月電力使用量が300kWh前後)なので何と10%強待機電力で食っていました。

そこで常時は必要ないものとして,デスクトップPCの本体とディスプレイ,DVDプレーヤと使っていないVHSデッキのプラグも抜きました。

これにより,当家の待機電力は30Wにまでに削減されましたが,このうち待機電力最大のものは,実は無線LAN親機の17W(定格)です。こんな記事を書いているのに使う電力であるところがジレンマですが,これはパソコン等のみならず,IP電話にも不可欠なもので待機電力というよりも動作電力ですから致し方ありません。たぶん次が予約録画のHDDの4W,コードレス電話機の親機と子機で約5W,電子レンジが1〜5W,残り液晶TVは1W以下だと考えらます。ウチのだけかもしれませんが電子レンジの待機電力は周期的に0.9Wから5W位まで変動します。平均して3W程度でしょうか。結構大きいのでこれも使用時のみコンセントにさす事にしました(運転時大電流が流れますから抜き差しは最小限にしたかったのですが)。これにより当家の待機電力は27Wくらいになりました。

最後まで残った27Wの内訳(概略)は,
1. ADSLモデム兼無線LAN親機 17W
2. コードレスホン親機・子機 5W
3. HDD録画スタンバイ   4W
4. 液晶TV本体+その他 1W以下

なおこの27Wというのは,大したことないようですが,常時食いっぱなしですから,一ヶ月の積算電力量は27W×24h×30日=19440Wh=19.44kWh,1kWhあたり22円で計算すると,電気代428円也です。

当家では待機電力の割合を10%から6.5%まで下げることができ,ほぼ平均的になりました。
10%の時点でも,すでに実行していたのが,石油温水器の給湯電源,トイレの便座,エアコンのプラグなどです。これらは特に待機電力が大きいので,合計20%前後だったかも知れません。

待機電力が気になる方は,このように積算電力量計のチェックされるのが一番だと思います。やろうと思えば機器ごとの回り具合で測定することも出来て確実です。一度クリアにされておいて,必要な分は納得づくで使用されるのが良いと思います。ワットメータなるものが市販されていますが,これはごく微弱な待機電力は測定出来ないようですし,測定できるような機器は定格消費電力の表示があります。

なお,機器類の付加価値としてある便利機能をあえてに無効にすることによる損失,それから機器類を傷めてしまっては元も子もありません。それから,待機電力を全く食わないものもありますし,待機電力カットはくれぐれも納得づくでカシコク,ムダな労力やお金を掛けないで済ませたいものです(数字が出ていれば妻からの節電攻撃も回避できますし)。

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Cecilia

差しっぱなしのコンセント、多いですね~。(苦笑)
なるべく抜いておこうと思います。
by Cecilia (2011-07-15 14:23) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメント有り難うございます。
差しっぱなしでも全く流れないものもありますが,機能のついてそうなものがアブナイです。妻がやたら気にしており,「そんなのいくらでも無いだろう」とタカをくくっていましたら,結構な電力でびっくりしました。小さな電力でもずっと入りっぱなしですから,積算電力量としてはバカになりません。
ガスや石油の温水器のコントローラは一番食うと言われます。
毎回抜くのは手間ですので,冷蔵庫などの切れないもの以外は個別のブレーカーで落としておくのが得策かもしれません。
スイッチ付きの節電テーブルタップなるものがありますが,モトを取るのは容易ではありませんので,節電には余分なものを使わないのが秘訣だと思います。
by Enrique (2011-07-15 20:35) 

アヨアン・イゴカー

>アラゴの円盤
あの円盤、アゴラと呼ばれるものなのですね。
by アヨアン・イゴカー (2011-07-16 08:13) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさん,niceとコメント有り難うございます。
19世紀初頭の発見者のフランス人の名前がついていますが,原理は解らなかったようです。その後イギリス人のファラデーにより実験的に発見されマックスウェルにより現象理論として一般化された電磁誘導現象がその本質でした。
アルミは静的には磁石につきませんが,アルミに限らず電気導体は変化する磁界に対して電磁誘導により渦電流が流れ磁石(磁性体)と同じ動作をします。最近の強い磁石ならこの現象で容易に1円玉を動かせます。
発電にも,使用電力量の測定にも,電磁誘導現象を使っている事になります。
by Enrique (2011-07-17 06:52) 

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