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節電の具体策(照明編) [科学と技術一般]

今回は照明,特に昨今人気のLED照明について考えてみます。これは節電の優等生です。基になった青色LEDは日本の開発ですし,大いに応援したいところではあります。メーカーのページで節電量が算出できるようになっていたりしますので,便利です。何かものすごく省エネ出来るような気がして期待出来ます。

明るさあたりの消費電力が何倍も多い白熱電球は全部消費電力の少ないLED電球に替えてしまいましょう!というのが一番簡単でいいのですが,なにぶんLED電球は高いです。それでも,節電効果で十分元がとれ,寿命まで使うと何万円分もトクをすると,メーカーのページに出ています。本当でしょうか?

計算自体は正しく,何のゴマカシもありません。しかし,何万円もトクをするためには,白熱電球を何十個も取り替えるくらいの使用時間でないとあり得ません。グラフでLEDの方はきれいな直線ですが白熱電球の方は階段状になっています。階段のひと刻みがタマの交換を意味しています。LED電球の寿命とされる40000時間の間に寿命1000時間の白熱電球は40個使うということです。これだけの時間を使う事は一般家庭であるでしょうか?少なくとも当家では私の寿命内ではあり得ません。なお,LEDの寿命時間40000時間というのはつけっぱなしにして5年間ほどです。

当家では結構白熱電球も使っています。しかし,改修したこの6年半で1度も交換していません。ということはこの6年半の白熱電球の使用時間がその寿命の1000時間を越えていない事になります。そんなものだと思います。かりに今切れる直前だと仮定して,6年半で1000時間使っていたとしても,40000時間使うには,260年かかる事になり,当家では少なくとタマ一つで何万円もトクをするなんて事はまずあり得ません。少なくともモトはとれるのでしょうか?

40W消費する白熱電球を1個100円,同等の明るさのLED電球を3500円として,消費電力が1/5として計算してみますと,モトをとるには4000時間程度の使用が必要であり,当家では20年以上かかることになります。

LED電球比較.png
白熱電球とLED電球のコスト比較(LED電球の寿命とされる40000時間まで)


LED電球比較拡大.png
   同上 (点灯10000時間までを拡大)

それと気になる点がLED電球の寿命を70%に照度が下がる時間としている事です。消費電力がそのままと仮定すると,実質の電力効率はその分下がっていることになり,いわば暗くなっても使い続ける我慢効果が入っていることになります。Wikiによれば照度低下の原因は封止樹脂の不透明化とありますが,紫外線の殆ど出ないLEDで封止樹脂の劣化をみているということは,使わなくても劣化する可能性があると思います。樹脂を使わない蛍光灯でも,明るさの低下はありますから,青色LEDに蛍光体を組み合わせて擬似白色光としている現在のLED照明でも蛍光体の劣化要因はありそうです。

ですから,LED電球は使い続ければいつか必ずモトはとれますが,何十年も掛けてモトをとるのは現実的でなさそうです。当家の様に使用時間が少ない家庭では,モトをとることもあやしく,従ってまだ切れていない電球のタマをLEDに変える必要は無い。という結論になります。モトをとってかつオツリがバンバン出るのは,常夜灯の様な使い方でしょっちゅうタマを交換しているようなところです。交換手間も省けて有利です。乾電池などで点灯する場合は電気単価が圧倒的に高いですから,ずいぶん前からLEDが有利になっています。

もちろん,あえて投資して,わずかでも電力使用量を減らした方が良いと言う考え方もありましょう。しかし,注意しなければならないのは,使用量の少ない部分には必要性が低いというのは,単に個人的なケチだけではなくて,LED電球を製造販売すること自体にも電力を使っているという事です(全ての節電型商品についても言える事ですが)。この電力使用量ははっきりしませんので,ごく大ざっぱな見積もりをしますと,現在日本人一人当りのGDPは1日約1万円,全使用電力は一人当り常時約1kWです。全ての活動に使われた電力をモノの値段に分配すると,1日1万円の価値につき24kWhとなります。従って3500円のLED電球がユーザに届くには,8.4kWhの電力量が使われていることになります。このモトがとれないと,ヨノナカのためにもなりません。さすがにこれは260時間ほどでモトがとれますが,それでもウチのように使用時間が少ない場合には,この製造等で使う電力使用量のモトをとるためにも何年もかかります。自分のフトコロの損得はモチロンのこと,ヨノナカの損得を考えても,まだ切れていない(ということは使用頻度が少ない)タマをムリに置き換えるのは得策ではないと思います。

コンビニチェーン店で照明をLEDに替えるのがニュースになっていました。何分コンビニでは年中四六時中照明をつけています。40000時間は5年弱で達成です。常時灯けていて照明の電気代が膨大なところでは圧倒的な省エネ効果はあります。しかも改善効果の少ない蛍光灯からの変更です。それでも効果的だということですね。あと企業と一般家庭の決算会計上の違いも考慮しないといけないことでしょう。

もちろん,LED電球が1000円以下とかに安くなればメンドウなこと考えなくても無条件で替えても良いでしょう。しかしお値段が下がるためにはドンドン買ってもらわないといけないというジレンマがあります。皆さん,電球はLED電球にドンドン替えましょう(笑)。

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koten

どうもご無沙汰しております。なかなかコメントできず申し訳ないです(何せ原発事故以来、喪失感充満&鬱気味でして(汗)
LED電球,私も家の電球をこれに換えたいと思っているのですが、ヨメに却下されてます(泣)・・なんでも「あの発光色は非人間的(暖かみがない)」とのこと。 まぁ分からんでもないですが。でも最近は暖色系のLED電球も発売されてますよね。あと、今年に入って、家の近所の道路の街灯がLED電球に置き換わったのを見たときは軽くカルチャーショックでしたね。考えてみると、節電のためには、街灯の電球(こそ)はもっと沢山LED電球に置き換えるべきなのになぁとも感じる今日この頃です。対コストの関係でナカナカ踏み切れないんですかね・・。
by koten (2011-07-12 20:32) 

Enrique

kotenさん,nice&コメントありがとうございます。
まああまり無理されず。
街灯は結構LEDに置き換わっていると思いますネ。信号機もそうです。私は水銀灯が好きだったのですが,LED化で夏の夜トンとムシが来ないのが残念ですね。多くの人にはメリットなんでしょうが。
効率は蛍光灯や放電灯よりも格段に良い訳でもないですがやはり点灯時間が長いとメリットはありますね。
色はいろいろ変えられますが,残念ながら青白っぽい方が電力効率高いですね。なかなかキラメキ感とかも出にくいと思います。ウチで替える時は,タマが何度か切れてかつLED電球が1000円以下になった時でしょうか。
by Enrique (2011-07-12 21:09) 

アヨアン・イゴカー

省エネ、節電には私も興味もあり大賛成ですが、企業や国が宣伝に使う数字のマジックには気をつけなければならないと思っています。こうやって、具体的に数字にして頂くと、心構えができます。
ちなみに、我が家の玄関の灯に使っていた白熱電球は寿命が一年でした。それを三倍以上長持ちする製品に変えたところ、実際に交換して2年位経っているでしょうが、まだ交換していません。1,000円以上していますが、150円位の白熱球とは確かに異なります。
by アヨアン・イゴカー (2011-07-16 07:57) 

Enrique

アヨアン・イゴカーさんnice&コメント有り難うございます。
数字のマジックも気をつけないといけないですね。
1年くらいで切れていた白熱球を替えられて,2年お使いでしたら,モトが取れていて今後寿命まではモウケもののように思います。交換手間も省けますし。文面からご使用中のモノは蛍光ランプかも知れませんが,これのLED球との差は小さいですが,今度切れたらLEDでも良さそうです。メーカー寿命を信じるならば約40年ですね。
by Enrique (2011-07-17 07:10) 

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