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コンピュータの速度に関する雑感 [雑感]

PCの分野ではプロセッサがどんどんオーバースペック化しました。数値演算,画像・音声処理などの分野では速いことはいいことでしょうが,PCを使って機器を動かしている分野では,むしろPCの高速化は困ったことです。実際のモノの物理的な動きは遅いですから,処理はそちらの速さ(遅さ)に左右されます。多くの家電製品や産業用品その他で見えないところで3世代前の8ビットのCPUが活躍しています。

私たちがワープロ使ったり,メール書いたり,ブログを書いたり,にもコンピュータ(プロセッサ)が速ければ,快適な環境で良いのですが,その間高性能なCPUは殆どお休み状態です。最近のものは,そのような時には自動的にクロックを落としたり,いくつかあるコアを休ませて,ムダな電力消費をおさえているようです。そもそも早過ぎることがムダ(マルチコアをまともに動かすアプリは殆ど無いようです)なのですが,見た目の良い新しいOSを使う(だけ)にもハイスペック機が要ります。

しかも依然速度のネックになっているのは,通信やディスクやフラッシュメモリ等の外部記憶とのデータのやり取りでしょう。プロセッサ内で済む処理はとんでもなく速いのです。何しろ,プロセッサ内ではじくソロバンに相当するレジスタが64ビットですから,2世代前の16ビットに比べたら,一度に扱える数字のケタ数が4倍に増えています。その上で,ソロバンをはじく速度に相当するクロック周波数がMHzからGHzに変わっていますから1000倍にも増大したことになります。さらにそのようなコアを2つとか4つとか持っているのが現状のPC用のCPUです。

かつて,数MHzクロックの16ビット機で何の不都合もなく事務処理をしていました。余計なことをして時間をとらすソフトもなかったせいか結構軽快だったと思います。現在は画像や音声を扱うので,これの圧縮・伸長などは内部で本格的な計算をしているので確かにプロセッサ能力は食うでしょうが,これとて,プロセッサ能力を使って通信の遅さや容量不足をカバーするためのことです。最近のクラウド処理の流れはムダなコンピュータ資源の削減につながるでしょうか?

現在私たちが(ムダに)使うコンピュータの処理能力がどのくらいのものかちょっと数字で見て見ましょう。スピードを測る尺度の一つにFLOPSがありますが,これは一秒間にCPU内部で浮動小数点演算を何回実行できるかという能力です。Wikipediaによれば,かつてスーパーコンピュータの代名詞だったCRAY社のCRAY-1(1976)は160MFLOPS,1997年に初めてコンピュータが人間にチェスで勝ったと有名になったIBMの専用機ディープ・ブルーは11.38GFLOPSだったそうです。

現在私が事務仕事で使うインテルのi7は,51.2GFLOPSだそうですから,ゆうにディープ・ブルーを数倍しのぎ,かつてのスパコンCRAY-1の数百倍の能力です。CRAY-1は企業の給与計算などをしていた当時の汎用大型機よりも遥かに強力だったわけですから,どうかしています。もっとすさまじいのは,プレステ3です。搭載する"Cell"というプロセッサは画像処理能力が強力ですが,それを含めたトータルの能力は2TFLOPSだそうです。何と,往年のスパコンの10000倍以上,チェス世界チャンピオンのディープブルーの200倍近い性能の小型コンピュータでテレビゲームを楽しんでいるのですね(私は持っていませんが)。

最近,理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」が速度世界一を達成したとニュースになっていました。完成目標が10PFLOPS(1秒間1京回の浮動小数演算)でその8割かたを達成したと。普通,科学技術の世界で世界一とか言うと,想像を絶するようなモノのような気がするのですが,どうでしょうか?完成時の10PFLOPSとしても,プレステ3の約5000台分です。1台3万円とすると,1億5000万円也です。もちろん,こんな勘定がそのまま成り立つ訳はなく,当然CPUを並列につなぐには間接的処理が発生して当然個数分に比例しては性能は上がらないですし,実際に学術的・実用的な計算に有効活用出来てなんぼのものです。

コンピュータの性能(速度や主記憶容量)は高いに越したことはありませんが,例えば数値計算の格子をちょっと細かくすればあっと言う間に食ってしまいます。実際的な計算速度はプログラミング技術にかかっているはずですし,汎用のコストの高い機械を使うのはモッタイナイ分野もあると思います。実態を知る人は大きな声は出せないでしょうね。

むしろ大きいのは,その技術や経済的な波及効果でしょう。それと国家プロジェクトとなれば,国の威信なるコストで測れないものがあります。何よりも量産品と一品モノの差があります。それでも,プレステ3の5000倍の性能の機械を400万倍の費用(性能あたりのコスト800倍)を掛けて開発するのは国民的議論あってしかるべき(だった)と思います。

もちろんこれは,「京」がアカンと言っているわけではありません。採算合わず撤退したメーカーさんをよそに,最後まで残って努力を続け世界最速にこぎつけたメーカーさんの責任感には敬意を表します。むしろ,プレステ3の価格対性能比がトンデモナイのだということなのでしょう。

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Cecilia

難しい用語が多いですね~。
12月に初期化した我が家のPC、最近次女がいろいろやっているためまた重くなってきました。
私はせいぜいワードを使うくらいなのですが・・・。
速度に関してですが、ダイヤルアップからADSLに変えた時は驚くほど速いと思いましたがADSLから光に変えてもそれほど速いとは思いませんでした。
by Cecilia (2011-07-05 09:26) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメント有難うございます。
私たち,パソコンの頭脳だけ比較すれば一昔前と比べたらとんでもなく早い機械を使っています。しかし,手足に相当するところが遅いのでさして実感わかないわけですね。実際のやり取りは遅いところで制約されてしまいますので。
ADSLと光では,ダウンロードはそんなに変わらないはずですね。たとえば,YouTubeなどへの画像のアップロードなどは変わるはずでしょうけれども。
by Enrique (2011-07-05 13:15) 

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