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音律を考える(6)(続・純正律) [音律]

前回純正律について基礎事項を書きましたが,以下の事を確認しておきます。

・そこで現れるエンハーモニック音は,ピタゴラス律やミーントーンにおける,いわば「やむを得ないずれ」というよりは,むしろ和音の純正を保つ重要な音だということ
・数値や音階的に見ても非常に美しいということ

これらを補足するのが本記事の目的です。そのために,音律の議論でよく使われる,「5度圏」を前回のデータを用いて書きます。たぶん,他の音律は5度圏から音高を求めることになるのでしょうが,純正律に関しては,「はじめに整数比ありき」で,これを5度圏に焼きなおすという作業です。でもそんな大それた計算はもちろん,セント値の計算も要らないと思います。比率のチェックだけですね。もう一度あの表を示します。

5リミット純正律の音律表
Euler音.png
この表を基に,5度圏に描いて見たのが下図です。エンハーモニック音の書き方に課題があるとは思います(5度間隔で並んでいるのに勝手にエンハーモニック音を挿入しています)が,見事なシンメトリーだと思います。Cから最も遠いF#は2つあるのですね。私はすごく美しいと思います。通常鍵盤用の音律としてはこの15の音から12音を拾いますので,少しかしがります。そして2箇所の-s.c.の5度と1箇所の2×s.c-p.c.(約19.6セント)広い5度を発生します。
純正律5度圏.png
オイラー純正律のエンハーモニック音そのままで書いてみた5度圏

素の姿の純正律は5度圏でも十分美しいと思いますが,如何でしょうか?
エンハーモニック音を含む15音そのまま用いることにより,全ての5度間隔が純正になっています。もちろん,この存在によりピッチの上下を発生してしまいますが。その代わり,鍵盤用に12音拾った音律では,ウルフを3箇所に持ってしまいますが,ピッチの上下は無いはずですね。REIKOさんはホ長調12音のオイラー純正律を用いて,大変美しい「調子の良い鍛冶屋」を演奏されていました。(つづく)

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REIKO

お早うございます。
この五度圏図、面白いですね。
こういうふうな書き方は、初めて見たかもです。
じっと見ていると、左右対称で人間の顔のようです。
私はいつも極端に狭い&広い五度の部分は「グニャグニャ波線」を描いてしまうので・・・(kotenさんに怒られる?)
もっとも、グニャグニャ線があちこちに入るのも、純正律っぽくて好きですが。
純正律は理論としては分かっても、適用できる曲が少ないのが残念ですね。
「調子の良い鍛冶屋」でも、何箇所かヘンな響きの部分があります。
玉にキズとはこのことでしょうか・・・。


by REIKO (2011-01-26 06:36) 

Enrique

REIKOさん,さっそくのコメントありがとうございます。
自分で5度圏を書いてみたことが無かったので,初めての図です。
15音を12音の5度圏に示したらこうなるかな?と思い,REIKOさんが動画で示しておられた図と矛盾しないので,出してみました。
12音拾うと,どうしても「波線5度」が3箇所出来てしまいますね。
15音で演奏したらどうなるか試してみたいものですが,こんどは響きは良くてもピッチの上がり下がりが気になりそうです。kotenさんが紹介されていたエンハーモニックギターならば可能ですが。。。
この音律好きな人には「あばたもエクボ」なのかもしれませんが。
by Enrique (2011-01-26 07:44) 

Cecilia

詳しいことはわかりませんがこの五度圏図、美しいと思います。
純正律にしてもミーントーンにしても、やはりハーモニーのある曲で必要になるのですよね?
単旋律の無伴奏の曲で演奏してみたらどのようになるのか、平均律で無伴奏曲を演奏するのと比較してどのような長所・短所があるのか気になります。きっと単旋律の無伴奏の曲で純正律・ミーントーンをやるのは無意味なのでしょうね。
by Cecilia (2011-01-26 09:32) 

Enrique

Ceciliaさん,nice&コメントありがとうございます。
美しさ感じてもらえ何よりです。この純正律ではオクターブ内に15音あります。鍵盤ではここから12音取り出しますので,かならず不純な5度が出ますが,歌やヴァイオリンなど音程微調整できる楽器では,この15音(以上)を使うことが出来ますね。
私は純正律マニアではありませんし,実践もしていませんので頭の中の話ですが,仮に単旋律であっても,前の音の響きや記憶が残っていると思いますので,技術的に可能であるならばむしろ純正律の方がいいように思います。
by Enrique (2011-01-26 14:14) 

koten

うーん、オイラーって純正律を何種類か考案したってことですかね(悩)。
私が認識しているオイラーの純正律は、下記サイトで解説されているように、
http://murashin.sakura.ne.jp/cache/default.mid_T33Eul-c.mid.htm

 「長3度が最大限純正になっているもの」で、「F-A-C♯」、「C-E-G♯」、「G-H-D♯」「D-F♯-A♯」の8つが純正な長3度になる調律法である、と理解しています。

Enriqueさんの描かれた図は、(約)22セント狭い5度を上側の2カ所で使い(合計44セント狭い)、従って下側の5度を44(即ち2×S.C.)-24(p.c.)=20セント広くしたものですよね。 換言すると、G-AとE♭-Fは22セント狭い小全音になり、B-C♯は大全音よりも20セント広い全音(大大全音ないし超大全音?(笑))になりますよね(?)。だとすると、この「超大全音」を跨ぐA-C♯、E-G♯、H-D♯(B-E♭)の3つの長3度は「ピタゴラス3度+20セント」の酷い(使えない)長3度になると思うのですが・・・。

 上記サイトの情報だと、「D-A」と「F♯-C♯」の5度を約22セント狭くして、A♯-F(B♭-F)の5度を20セント広く設定するみたいです。これだと上記8つの長3度が純正になります。

 ただ、どうも私も勘違いしてしまったようで(汗)、小生、今までオイラー純正律を『通常の所謂ハ長調専用の純正律の「H-F♯」の狭い5度を隣の「F♯-C♯」に移動させただけのもの』と思いこんでしまい、「D-A」、「F♯-C♯」、「B♭-F」の3カ所の5度を22セント狭くし(合計66セント狭い)、G♯-E♭の5度を66(即ち3×S.C.)-24(p.c.)=42セント広くする音律(つまり、平均律とのピッチの差異(セント値)が、C=+16、G=+18、D=+20、A=0、E=+2、B(H)=+4、F♯=+6、C♯=-14、G♯=-12、E♭=+32、B♭=+34、F=+14になる音律)であると思ってしまい、現在のカシオの電子キーボードにもこの値を設定してしまっています(汗)。これだと純正3度は8つ確保されるのですが、HとFisの長3度は純正でなく、代わりにE♭とB♭の長3度が純正になるんですよね(汗)。(※ただ、こっちの3度を純正にした方が実用的だとは思うしルネサンス時代のヴァイオリンではこの音律が実際に使われていたようです。そして、古楽一般で重要でないHとFisの長3度の方を純正にしてしまったがために、オイラー律は「結局実用化されなかった」のかな、との感があります。)


 換言すると、当初、上記サイトに掲載された数値データの内、B♭=-8、E♭=-10の値は「誤記」ではないか、と考えていたのですが、どうも私の方が「読解ミス(誤解)」しているみたいですね(大汗)。
 「22セント狭い5度は2カ所だけに留め、それでいて純正3度は最大限の8カ所で確保し、さらに、広い5度の広さはミーントーンのウルフ5度ほど酷くない、どうだい、これ合理的かつ美しいだろう?」というのがオイラーの主張なのかな、という気がしてきた訳です。

 なので、狭い5度と広い5度の配置はともかくとして、22セント狭い5度を2カ所だけに留めるという意味においてEnriqueさんの図は「オイラーの主張を実現している図」だな、と思いました。(なので、これから私の過去記事を修正しないとアカンですね(汗))。

 以上、長文ですみません(あ~時間掛かった(笑))。
by koten (2011-01-30 10:28) 

koten

補足:
>古楽一般で重要でないHとFisの長3度の方を純正にしてしまったがために、オイラー律は「結局実用化されなかった」のかな・・・
 ここですが、より正確には、
>古楽一般で重要とされないHとFisの長3度を純正とし、相対的に重要なB♭やE♭の長3度をいわば「見捨てて」しまったがために、オイラー律は「結局実用化されなかった」のかな・・・
と説明した方が説得力ありそうですね(汗)。

先ほど過去記事を修正してきました(ふーやれやれ(汗))
http://meantone.blog.so-net.ne.jp/2010-11-03

さらには、下記サイトで解説されているように、
http://murashin.sakura.ne.jp/cache/default.mid_T33Eul-c.mid.htm
オイラーの音律は「純正調/純正律 に分類される調律法の一つ」とあり、この意味(おそらく純正「調」の意味(ですよね?))が「音程変更(ないし鍵盤の分割化)をも想定している」ものであるのならば(ですよね?)、Enriqueさんの図の幾つかの音の複数設定化は「正しい理解」ということですよね・・・という訳で、流石ですねEnriqueさん。
by koten (2011-01-30 11:22) 

Enrique

kotenさん,コメントありがとうございます。
焦らせてスミマセン。純正律につき,私も過去の記事でカン違いしていました。kotenさんのコメントの理解でいいと思います。
ここに示したのは,いわばオイラー純正律の素の姿だと思います。ただ原典にあたったわけではなくて,前の記事に書いたWikiの英語版で解説されていたものを5度圏図に書いてみて,REIKOさんが「調子のよい鍛冶屋」で示されていたものと矛盾しないので,のせてみました。これ以上無いくらいにシンプルなので,多分これで良いと思いました。
この図は15音使っていますので,12音の音律だと3つ音を省くわけですよね。どれを拾ってどれを省くかでバリエーションが生まれます。kotenさんの以前の理解が必ずしも間違っているわけではないかもしれません。
by Enrique (2011-01-30 21:12) 

Enrique

補足です。
5度はすべての間隔が純正です。ただし,D-,DとF#,F#+とBb,Bb+音は適宜良いほうを使っての話ですが。
長3度は,A-C#, E-G#, B-Ebの3つ除いて9つ純正ですね。もちろん,これではホ長調とかいけませんので,調を変えないといけません。
F#-F#+間(どちらかに振ると,B-F#かF#-C#)は20セント(正確には19.6セント)広がります。これはひどいですが,ミーントーンの36セント(正確には35.7セント)よりは改善されているということですね。ただし,余計な音を発生しますので,ミーントーンとは一長一短といったところでしょうか。音を自由に調整できる楽器や声には純正律,そうでない鍵盤楽器などにはミーントーンというのが一つの考え方かもしれないと夢想しています。
余計に発生してしまった音を「えくぼ」と見るか「あばた」と見るか?でしょうか。いわば自然倍音という自然現象を,オクターブ12音という人為に当てはめた結果の事で,純正律はそれとは無関係に存在を主張しているように見えます。
by Enrique (2011-01-30 21:48) 

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