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フーガ形式(5) [音楽理論]

石桁真礼生「楽式論」のフーガ形式本文を用いてフーガ形式を概観している。今回はその5回目。

・フーガの実例解説(その2)
これは4声の短調の例。バッハの「平均律」第1巻プレリュードとフーガNo.16ト短調のフーガを用いる。
譜例177は第1群とそれにつづく挿入句。この曲の第1群には対提示部は無く一つの部分のみからなる。まずアルトに主題があらわれ,ついでその応答がソプラノに。そして応答句のニ短調からト短調に戻るため1小節の小結尾を持つ。3番目にバスに主題,最後にテノールに応答があらわれ,そのニ短調からト短調に入り,第2群の始まりである並行調の変ロ長調に向かう。
譜例177.jpg

譜例178は第2群の1を示す。主題および応答の入りが5回。4回目と5回目はストレッタ。主調の並行調である変ロ長調が持続されるが,1小節の挿入句でハ短調が用意される。
譜例178.jpg

譜例179は,第2群の2とその挿入句。ここでは定石どおり下属調の調性を主に持つ。下属調の応答は省略されることが多いが,この曲ではある。一方,ストレッタもオルゲルプンクトも見られない。2小節ほどの挿入句が続くがこれは,主調のト短調へ転調していく役目である。
譜例179.jpg

楽譜180は,第3群。主調を回復・確立する役目を負った部分。そのため主調のト短調に主題が現れる。ここでは,ストレッタが多用される。下属調であるハ短調が顔を出し,最後に主調で主題が堂々と2度演奏され曲が終了する。
譜例180.jpg

なお,前回と今回取り上げた2つの例は,第2群が二つの部分から成り立っていたが,さらにその間に近親の他調による展開部分を持ったさらに複雑なものもある。(つづく)

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