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楽器用木材の特性(2) [楽器音響]

楽器用木材の特性(1)より,Journal of Guitar Acousticsの1981年3月号(No.2)に掲載された"On Musical Instrument Wood"と題したDaniel Haines氏のペーパーを紹介している。本稿はその続編。

別表にしているものに,その他の樹種がある。この中で指数Lが最も高いのが,Western Red Cederの89000である。これはスプルースの値を大きく上回る。ギターで「杉」としておなじみのもので,響きの強い楽器と符合する。また,キルン・ドライのRed Woodの76000,1910年産のDouglas Firの65000など,各種Spruceをしのぎ,Cederに迫る強力な材もある。なお,最後のDouglas Firは,何でもアリゾナの3000m級の山で落雷を受けて枯死していたものからとった材で,たっぷりと紫外線を浴びた状態でエイジングされたとのことである。このことから,バイオリン製作家が,ニスを塗る前のホワイト・バイオリンを少し放置して,木地を焼けさせる意味に言及している。興味深い指摘だが,Douglas Firのサンプルがこの条件のものだけなので(楽器用のエイジング済みの高級材料を揃えるのは大変なのだろうが),焼けていないDouglas Firとの比較が必要だろう。

今まであげた木材のラウドネス指数Lの平均値(*Brazilianは1サンプルのみ)を大きい順に並べると,

  • トップ材: Western Red Ceder > White Spruce > European Spruce > Sitka Spruce > Red Spruce
  • バック・サイド材: Brazilian Rosewood* > Indian Rosewood = Andaman Paduc > European Maple (Czechoslovakian) > European Maple (Norway Maple) > European Maple (West German)

となる。ただし,同一の材の中でも相当なバラツキがあり,木の種類よりも,同一種の木の中での選別が重要のようである。ちなみに,Japanese Spruceはエゾマツのことらしいが,1サンプルのみでL値が15000。この値だけから見ると,あまり良い材ではない。

ここで導入されたラウドネス指数Lがどの程度楽器材料への適性を反映しているかは検討を要するだろう。しかし,「軽く・剛性が高く・内部ロスが小さい」という指数であるので,確かに物理的な「鳴りやすさ」を反映するのだろう。経験豊富な製作家ならば,持った重さや叩いてみた響きでいずれも感じ取れる量であるが,これは一つの客観データということである。密度は重さと寸法から簡単に,剛性は引っ張りや曲げのちょっとした測定で可能であろう。減衰の測定は最も難しく,精度も悪そうだから,製作家は叩いた響きを耳に叩き込んでおかないといけない。(つづく)
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