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ギターと他の趣味と(5) [雑感]

前回からのつづき。 専門の方からは異論も出そうだが,直接束石の上に柱を立てる柱立ては,地震にすこぶる強い。殆ど無限の力で強制変位が発生する地面には緊結しないのだから,地震力が建物に加わりようが無い。その代わり,ずれることはある。もちろんこの状態で建物を箱にしてしまえば強いのだが,柱と梁や桁で組む伝統工法では,丈夫な貫を使い,筋交いのような斜め材で無理に変形を抑えることをしない。平行四辺形的に変形するいわば柔構造である。トラスでもラーメンでもない。壊れないように剛性を高めるのではなく,粘り強くする発想である。もちろん,すじかいを全く入れないのだから,壁量は0。建築基準法上は全く強度のない建物ということになる。

本格的茶室にはにじり口が要る。しかし,この意味は,極小の空間を広く見せ,にじり入ることで武士も町民もない別世界に立ち入ることを意識させるセレモニアルなものである。しかし,何分利休が半分に切って用いた板戸など,今どこを探しても無いし,これを模して大枚払うのもどうかと思う。普通の立って入れる入り口とした。強いて言えば,貴人口である。しかしこれはリフォーム前の自宅で使っていた格子戸の再利用なので,「わび・さび」の精神と相容れる,と勝手に判断する。
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日本の建物に基礎や土台が使われ出したのは,割と最近らしい。秀吉の小田原ぜめの時の一夜の築城が有名であるが,建物を早く建てるためには,定規となるまっすぐな土台を架け通すのが最も合理的であったのだ。しかし,湿度の高い日本で,地面に木材を寝かせて使うのはまずい,そこで近年はコンクリの基礎でかさ上げしたらしい。その点,伝統工法の柱立ては基礎も土台も必要でない反面,加工と組み立てに非常に手間が掛かる。材料を刻み出して,「これだけ手間を掛けるならば,もっと良い材料を使っても良かったかな?」と思ったが,漕ぎ出した船,安上がりで通すことにした。手間は自分自身なので,誰からも文句は無い。

足回り(足固め)は,長ほぞを突き通し,樫の鼻栓で留める。高床式住居のようなもので,床下はスカスカ。
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下地窓を内部から。本来は土壁の下地の「こまい」を見せたものだが,土壁はあきらめたのでここは意匠のみ。風雨を避けるため,アクリル板をはめ込んだ。
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茶室には水屋が必要だが,スペースが無いし,これ以上床面積は付け足せないので出窓状に,極小のものを作りつけた。今は物置だが,実際にお茶会をするには屏風などで仕切る。
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これもミニマム・スペースの壁床。ここに軸の一本でも吊るせば,物置小屋とは言わせない。
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専門の方が見たら,おかしなところだらけだろうが,木の工作物である。最初物置の積もりだったので精神性は低い。いつものパターンだが,取り組んでいるうちに,だんだん欲が出てきて,凝りだし,得体の知れない建築物となった。最大の反省点は,当初物置のつもりだったので柱を切るのがもったいなく,3mをそのまま使ったが,背を低くしないと茶室の雰囲気は出ないことだった。屋根を工夫したが腰高の印象はぬぐえない。そこで妻の登場だが,訪問客から,「お茶室ですか?」と聞かれるのに,「いえ,ただの物置です」と答える。謙遜も日本の美風ではあるが,何事も行き過ぎは良くない。 ギターとのつながりはもちろん,木。木の構造物として,ていねいに組み上げるのは共通である。メタルフレットとマシンヘッドは例外だが,本体に金属は使わない。茶室ももちろん躯体に金属は使わないが,小物としては色々使う。小さな楽器一本で音楽の小宇宙を表現するギターと言う楽器は,「わび・さび」と共通する精神を持っているとしたら,単なるこじつけだろうか?(つづく)

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