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音律とギター(2) [音楽理論]

音律に関しては,計算がやや面倒だが,何も高等数学を使うわけではなく,分数と指数,対数くらいである。現在では,Excelなどを使って手軽に計算できる。前回は,チューニングの観点から振動数比,もしくは平均律との差をセントで示してきたが,やはり,ギター愛好者としては,そのような音律がギターのフレット上でどう刻まれるのか?というのは最も興味のあるところだろう。ここでExcelで計算した,開放弦を主音とした際の12フレットまでのフレッティングを図1に示す。音律としては,ピタゴラス音階,純正律,ミーントーン,12平均律とする。このミーントーンと平均律の間(正確にはピタゴラスとの折衷)には,ヴェルクマイスターなど,各種の不等分音律があることはすでに述べた。

図1.gif












                図1 各種音律による,フレッティングの違い

ただし,この図の中で全てのフレットがまっすぐになるのは12平均律のみである。もし他の音律でまっすぐなフレットにすると,弦毎に異なった調になってしまい,使い物にならないことになる。正しく各音律を用いるならば,図2,図3のように,弦毎にフレット間隔が異なることになる。それぞれ,図2はホ長調の純正率の,図3はホ長調のミーントーンのフレッティングである。

図2.gif






                
図2 ホ長調純正律のフレッティング



図3.gif







図3 ホ長調ミーントーンのフレッティング


ミーントーンでは比較的まっすぐなフレットが多く,実用性があると思われる。また,フレット間隔がハイポジションに行くにつれ,一様に縮まるのでなく,かなり逆転現象が発生していることがわかる。ギターなどの古い絵で,フレットの広狭が逆だったり,不規則だったりすることがあるが,必ずしも画家の描写の間違いではないのだろう。


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コメント 4

koten

たびたびkotenです。
参考までに、下記サイトに、ラコートの可動フレットギターの写真が載ってます。この写真を見ると、所謂サドルの位置も可動式であるため、各種音律を試みるにあたり、サドル位置を相対的に変えることで、できるだけ各フレットの段差的なずれを減らす工夫ができるものと考えられます。
http://www.paulpleijsier.nl/blog/?page_id=27

 下記サイト(パノルモの半可動式フレットの記述)も参考になります。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/7500/sky2.html

 というわけで、この時代は、色々な音律が試みられていたようですね。

 ご存じかと思われますが、現代のギター製作家における「うねうねフレット」の製作法の公開サイトです(おそらく世界初公開なのではないでしょうか。)
http://www6.ocn.ne.jp/~kiyond/fret-work2.html
by koten (2009-08-27 20:16) 

Enrique

貴重なページの情報,ありがとうございます。kotenさんのページには,古典音律による演奏が沢山ありますね。少し勉強させてもらいます。
普通にドから組み立てるのがミーントーンのようですが,私の計算では,ホ長調の純正律に合わせるような意味で,ミから組み立てています(ホ長調で移動ドをやっています)。そのため,例えば本来長いはずのミ・ファが短くなっています。こういうのをミーントーンというのかどうか?ですね。

この計算では各弦の長さ一定でやっているので,凸凹が大きいですが,上駒・下駒を出入りさせれば緩和できるはずですね。
by Enrique (2009-08-27 22:26) 

koten

 早レスありがとうございます。

 ううむ、ホ音基準のミーントーンですか。そうするとウルフ(=広過ぎて破綻した5度)の位置が4つ移動するので、よく使うC-G音程がウルフになると思うのですが、大丈夫でしょうか。

 ちなみに私も、ギター音楽では(バロック~古典派の鍵盤音楽と大きく異なり、)ホ長調を多用することから、E-G#の長3度は綺麗に響くようにフレッティングした方が良いと考えております。一方で、ギター音楽ではロ長調やそれ以上の♯系の曲は殆どなく、一方で♭系の曲も少なめなので、「ギター独自の音律」を創る余地がありそうだなぁ、と感じていて、色々と試しているところです。

 補足:私の書いた「サドル」の記載は「ナット」が正確ですよね、、、、失礼しました(汗)。
 昨年ある製作家にお願いしたギターの古典調律フレット化では、いわば「キルンベルガー改」という感じの改造をして頂いたのですが、ナットもサドルも2,3,4弦で結構な段差が付いてますね。
by koten (2009-08-28 21:03) 

Enrique

ホ長調の純正率と比較するため,何も考えず計算だけした結果です。ご指摘のとおりで,実用性はなさそうで,これでは,ソルの得意なハ長調は弾けないですね。5度がやられたら平均律よりも悪いですね。

大雑把にギター曲の調号は♭3つから#4つですから,ミーントーンでやるならば真ん中をとってCかGでやるのが順当でしょう。また,ご指摘どおり,ギター向きのウェル・テンペラメントがあるような気がします。kotenさんの研究成果を期待します。

平均律フレットでのよりよいチューニングを議論しようと思っていたところ,音律に踏み込んでしまいました。本ブログはこれに関しては殆どしろうと状態ですので,またご指摘ご意見あればお願いします。
by Enrique (2009-08-28 23:06) 

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