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マイクロフォンの使用について [電気音響]

これには昔から賛否両論ある。どうしても理想論と現実論がごっちゃになりがちである。これを整理しないといけない。ジョンが使っている云々も,まず置いておく。

まず,理想論。クラシック音楽でPA使用はありえない,と言う考え方。6月のシリーズでのベラスケスもそう言っていた。それに現在は楽器そのものでさえ,時代考証にこだわる。エレクトロニクスを用いた音響創出などありえないはずだ。特にピリオド楽器でPA使用はありえないはず。そのため,聞こえる場所でしかやらないと言うのもクラシカル演奏家の一つの矜持だろう。良いホールが格段に増えた現在の日本の状況はその点で有利にはなった。

あとは,PAに頼らない,なるべく大きな音量の楽器の使用である。現在,ラティスブレーシングやダブルトップなど,より表面板の振動を容易にした楽器が開発され,用いられている。しかしながら,楽器の改良だけでは限界があるし,通常音量と音質・音の伸びはトレードオフの関係にあるといわれる。ガルブレイスのように,エンドピンと共鳴箱で,アコースティックに音量を増大するのも一つの手である。丁度チェロのように弾きやすさと共に音量増大を得たわけだ。

次に現実論。ギターはもともと大きなコンサートホールで演奏する楽器でない。現在,それをあえてするならば,PA使用は当然と。これによる最大の問題点は音が悪くなること,増幅による不自然さが出ることである。ならば,音が良く不自然さが解消できれば使っても良いか?コンデンサマイクと控えめな増幅度によるPA。小さめで音の良いスピーカを用いるならば,良く聞こえないよりは良いのではないかと言うことになる。現在,使用機器を吟味するなどして,一部使われている。もうPA使用で有名なジョン。村治佳織さんも右手の故障以前は使っていなかったと思うが,以降は使うことが多いようだ。ギターの音が通りにくい原因の一つに,音の低さがある。ギターの実音ではヴァイオリンやフルートよりも1オクターブ以上低い。これも聞こえの悪さの一つの原因である。

PAを使うとして,やはりその使用機材やセッティングがある。これをやるのは照明などと込みで興行をやる業者は,大概ポピュラー音楽のそれだ。そのようなプロは,クラシックギターをサウンドホールから離したダイナミックマイクロフォンで変な角度からとったりする。この種のマイクは感度が悪いから,わずかの距離の違いで,音が入ったり入らなかったりする。音が入っていないと苦情すると,「音が出ていないのだ」と,のたまう。ポピュラー音楽の積もりで音作りをやってぶち壊しになっていることに気づかない。クラシックギターの繊細な音色など全く眼中(耳中?)にないが,音楽の主導権を握っていると錯覚しているミキサーさん。そのような場合は自分で音が入るようマイク位置をいじるか,演奏中近づくなどの自衛措置をとるしかない。あとポピュラー流では,「かえし」と称するモニタースピーカーを使う場合が多いが,ここから自分の出した音が微妙に遅れて出てくると,またこれが弾き難い。ただでさえ,プレッシャーのかかる演奏がPAによってぶち壊しになる。この手の音響屋さんの場合はご遠慮して,自分で機器を持ち込むしかない。

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