SSブログ

年齢により聞こえる音(つづき・その2) [電気音響]

前記事までは,すべてハードウェア的なことを言って来た。長い人生経験など,ソフト面を考慮すれば,単に音響面のわずかな差よりももっと大きいものがあると思う。

例えば,「若者が聞くよりも超高音域で音が少しカットされているはずだ。」という知識でも聞こえは変わってくるはずだ。なぜなら,人間は音楽を単なる音響としてではなく,意味のあるものとして聞いているからである。

知っている曲だと,評価が厳しくなると書いたが,逆の例もある。知っているある曲。自分でも弾きこんだ曲ならば,細部まで知っている。演奏を聴いて,出てくる音が調子よく予測とはまっていれば,多少の音抜けなどは補って(修正して)聞いている事がある。生演奏や映像は特にその傾向が強い。初めて聞いた曲は,その補いはなく,今度はそれを標準として記憶に入れてしまう。演奏中のしぐさや顔の表情で音が伸びている様に錯覚することすらある。経験豊富な奏者はそれがうまい。トレモロがあたかも連続音のように聞こえるのも,心理的な残響がきいているからだろう。

良く引き合いに出される耳の錯覚に,電話のベルの音がある。鳴動が1秒,無音が2秒なのだが,鳴っている時間の方が長く感じる。これの原因に関する定説は知らないが,無音時も心理的残響で鳴り響いているのか,あるいは,リズム上次の鳴動を予測して聞いているのか,そのいずれかもしくは両方であろう。その結果,無音の2秒間は大幅に圧縮されて聞く事になる。良い演奏もこの様なものであろう。聞き手をうまくリードし,聞き手は演奏者に乗せられて聞くことができる。逆のケース,初心者のおぼつかない生徒の演奏をギター教師はうまく合わせて聞いている。両極端な例だが,演奏は弾き手と聞き手との共同作業であることがわかる。
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0