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チューニングの作法と原理 [音楽理論]

ギター演奏においてチューニングは開始前のマナーのようなもの。名人は演奏中にも盛んに修正するが,やはり開始前になるべく正確にしておきたい。気持ちを落ち着ける効用もある。

最近は電子チューナーが普及し全盛である。トルナボスをつけてみてもチューニングに少し違和感があった。音の出方が異なるためと思われる。体調が悪いときなどやはり中々合わないことがある。電子チューナーを借りて試しに6本をチューナーで合わせてみたことがあるが,どうもしっくり来なかった。電子チューナーで用いる音律は平均律である(他の音律が内蔵されているものもあるが,ギター調弦ではこれのはず)。これは12半音すべてが均等に割り振られ、転調が自由にきくなどの理由で現在広く用いられている音律である。

調により少し調整しないと響きがすっきりしない。このことが電子チューナに頼るのがよくない理由の一つ。ではなぜ、平均律チューニングで良くないのだろうか?感覚的に感じておられる人は多いと思うが、具体例をあげてみよう。開放弦でホ短調を弾くとする。平均率で合わせた場合と、ホ短調が純正に響くことを想定して合わせる場合の周波数をA4=440Hz基準として比較してみると,

平均律

  • 1弦: 329.628Hz
  • 2弦: 246.942Hz
  • 3弦: 195.998Hz
  • 4弦: 146.832Hz
  • 5弦: 110.000Hz
  • 6弦:  82.407Hz

ホ短調の響き重視

  • 1弦: 330.000Hz
  • 2弦: 247.500Hz
  • 3弦: 198.000Hz
  • 4弦: 146.667Hz
  • 5弦: 110.000Hz
  • 6弦: 82.500Hz

3弦が2Hz程度異なる。この差は大きい。響きにもろに影響する。12平均律は,いわば,すべての調に均等に誤差を拡散したもの。ギターでは24調全て用いるわけではなく,「ギターで弾きやすい調」で述べたように,良く用いる調が存在する。ギターで多用する調と殆ど用いない調の誤差を均等にする必要はない。用いる調で純正に近い調弦にしておけば良いという話。まずは弾く調の主コードの響きが美しいことが,調弦の秘訣。ギターの魅力は単音の音の美しさはもちろんだが,和音の響きの良さが身上。モダンギターはリュートやバロックギターに比べ,チューニングが随分楽なのだから,もっと敏感になっても良い。用いる調で最もよいと思われるチューニングをしてくれるチューナーも現在の技術で簡単に作れるはずで,あるいはそうなっているのかもしれないが,持っていない私は寡聞にして知らない。

なお,以上述べたのは,開放弦同士の音程に関してであり,フレッティングに関しては奏者はどうしようもない。楽器により,古典ものに向いているとか,スペインものに向いているとか言われるのは,フレッティングの違いによることが大きいようだ。


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