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暗譜に関して(過去の事例5) [演奏技術]

BWV998「プレリュード,フーガ,アレグロ」を,渡米中良く弾いていた。「フーガ」は苦労したが,それ故か良く覚えていた(その後すっかり弾けなくなってしまったが)。それと,当時はやったブローウェルの「11月のある日」,それと定番,マイヤーズの「カヴァティーナ」などもよく弾いていた。1年弱の渡米中,少し慣れてきた後半はレッスンを受けようと思って,電話帳を繰り,一番よさそうな人に一度会ったのだが,南部の田舎ではクラシックのプロパーの人はおらず,フラメンコ・ポピュラー系の人だった。結構弾ける人で,折角の滞在だから習おうかなとも思ったのだったが,カッタウェイのエレアコという,その人の楽器を見て,その気が萎えてしまった。私のベラスケスをせいぜい3000ドル程度の楽器だと評価してくれたのも,気持ちに追い討ちをかけてしまった。

帰国後,昔弾いたソルの「魔笛」を発表会で弾いたりと,無理をしなかったのだが,バッハ熱がまたふつふつと沸いてきた。

帰国翌年は「リュート組曲1番ホ短調」に取り組んだ。全曲レッスン受けた時点で,発表会曲として師から「ジーグともう一曲」と言われたのだが,選曲として中途半端な気がした。特にブーレは楽器を始めたころから弾いており,これとジーグを弾くのは安易な気がした(後で聞いたところ,ジーグに入る指慣らしに良いのだそうである)。ジーグはギターで弾くには難曲の一つだろうが,これだけでは魅力が無い。やはり終曲を飾るにふさわしい曲である。1週間待ってもらい,曲を決めた。プレリュードと終曲ジーグ2曲ではいかにも最初と最後をキセル乗車しましたと言う感じなので,結局,「プレリュード,アルマンド,ジーグ」と3曲とした。
結果は,プレリュードあたりまでは比較的よかったが,ついにジーグの後半で集中力がとぎれ,かなり弾きなおしてしまった。

プラス原因:アルマンドは昔弾いたことがあり,新曲は前奏曲とジーグ。バッハは好きなので,情熱を傾ける対象としては不足はないと思った。

マイナス原因:情熱は原動力だが,やはり技術が伴わないと如何ともしがたい。プレリュードだけでも,パッサジオの部分とプレストのフーガの部分を持ち,2曲のような曲だ。アルマンドを挟んで,終曲のジーグは難曲。学生時代のように十分弾き込んで十八番状態にしていないと,きびしかった。プログラムとして良くても奏者の技量が伴っていない。まず,スタミナが持たなかった。楽器にもまだ慣れていなかった。フレットが非常に低く左手が困難なことは分かっていたが,低音にオーガスチン赤を張るとかなり弾きやすくなることが分かり,安心した。しかし楽器に対する疑念が一旦頭をもたげると,払拭するのが困難になる。高価な楽器を買い換える人がいるが,こういうことかもしれない。ジーグなど鍵盤で弾くと楽なのに,何でこんな苦労するんだ?という思いも頭をもたげる。バッハを弾きたくてギターを放棄し鍵盤に走った過去が頭をよぎる。

服装・靴:上着を着ていたが,ものすごい量の汗が出,目が開けていられなくなった。上着のせいだけでもなく,後半スタミナが持たなくなっていた。

蛇足:私は死ぬ思いで練習していると言うのに,家内は冷やかし半分でたまに私のギターの楽譜を取り出して,ピアノで初見で弾く。「あー,いつもお父さんの聞いてるから,すぐ弾けるわ。」とか言っている。難曲ジーグといえど,鍵盤ならインヴェンション・レベル。
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