アメリカでの楽器入手(ピアノレンタル編) [その他]
仕事で1年弱,家族とアメリカに住んだとき,生活基盤の立ち上げの上でもっとも課題となったのがピアノの用意であった。私自身は,ソナチネや2声のインヴェンションを少し弾けるくらいのレベルなので,1年くらい無くてもギターがあれば痛くも痒くもないが,家内と娘にとってはそれまでの人生を否定することであった。
いきおい,私が動かなくてはならない。
楽器店を探し,レンタルすることにした。街で一番大きそうな楽器店ではうちはレンタルはしていないと断られたが,親切にもアフリカ系(南部ではこちらの人たちのほうが多いのだが)家族が経営する郊外店を紹介してくれた。古ぼけた家具調グランドであったが,どうにか当主の面目を保った。南部の田舎町には,選べるほどのレンタル・ピアノの数など無いのだった。グランド型はそれ1台だけだったと思う。
家族経営の足の悪い親父が,子供を連れてトラックで運んできた。日本の感覚とはかけ離れた巨大なトラック。日本なら3~4人がかりで運び込むところだが,親父が1人でジャッキ付きの台車程度で運ぶ込む。子供がかいがいしく手伝っているのに感動して,思わずチップを弾んでしまった。
毎月,50ドルほどのレンタル料の請求が来,小切手で支払うのだが,何回かして請求書が来なくなった。店に行って事情を聞いたところ,コンピュータが壊れ,顧客データがすべて消えてしまったのだった。こちらから申し出たので大変喜んで,残りのレンタル代を負けてくれた。残りのレンタル代を払わないで逃げることも可能であったが,礼儀正しい日本人はそんなことはしない。通常ちょっとした契約行為にはSSN(社会保障番号)が必要だが,その時は出さなかったのではないかと思う。
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